ネットランナー会レポート 22.05.06 『ICE掘削』
System Gatewayでテキストの書き方が一新され、新しいキーワードがいくつか登場するようになった。特に印象深いのはアイスブレイカーで、主にサブルーチンをブレイクする能力に境界/Interfaceというキーワードが付属するようになった。
ICEに干渉するためには、そのプログラムの強度/StrengthがICEの強度以上である必要がある。例えば、《Abagnale》が《Archangel》のサブルーチンをブレイクしたければ、まず《Abagnale》自身の能力を使い合計4クレジット払って強度を+4し、強度6にする。それからようやく《Abagnale》の「コードゲートのサブルーチンをブレイクする」という能力が《Archangel》に対して使用できるようになる。
以前のテキストでは強度を合わせる必要がある能力かどうかを判別するのにちょっとしたコツが必要だったが、新しいテキストでは境界能力であるかどうかだけで判断できるようになっている。サブルーチンをブレイクするのは境界能力なので強度合わせが必要で、迂回/Bypassする能力は不要。とてもわかりやすい。NISEIグッジョブ。
――という前置きから今回は強度がテーマ。強度を上げるだけがこのゲームの戦い方ではないのだ!
Anarchというのはその名の通り反体制を標榜する派閥。ランするのは現支配者であるコーポの資産やデータを滅茶苦茶に破壊するためである。それはランを妨げるICEとて例外ではない。
《Chisel》はICEの上にインストールする(搭載/Hostする)プログラム。自身の持つウィルスカウンターの数だけホストのICEの強度を下げる能力を持っており、強度が0以下になれば自分もろとも破壊してしまう。
このカードはかつて猛威を振るった《Parasite》の調整版であり、能力はかなり似通っている。毎ランナーのターン開始時に自動的にカウンターが溜まる《Parasite》に比べ、《Chisel》のカウンターはホストとなっているICEとエンカウントするたびに増えていく。アグレッシブなランナー向けのカードと言えよう。非レゾ状態のICEに搭載できるかという違いもある。
ICEの強度を0以下にまで下げることができればトラッシュできるという能力を持っている両者だが、常に効果を発揮している常設能力/Static Abilityを持つ《Parasite》に対し、《Chisel》の場合はエンカウント時にチェックする条件節能力/Conditional Ablity。エンカウント時に強度0という条件を満たさなければならないので、《Leech》(《Datasucker》)を使ってエンカウント中に強度を下げてトラッシュ!――ということはタイミング的にできない。《Parasite》ならできるのに!
なんだ使いにくいじゃないか!……と思ってしまった人は安心してほしい。ちゃんと《Chisel》を活かすカードは用意されている。
《Devil Charm》はICEの強度をなんと6も下げてしまうハードウェア。使用時にゲームから取り除かれてしまうので再利用できなくなってしまうという超気合の入った能力だ。能力の誘発タイミングはICEにエンカウントしたときで《Chisel》の能力の誘発タイミングと同じである。
アンドロイド:ネットランナーでは同じ誘発タイミングの能力が複数あった場合、その解決順はコントローラーが選ぶことになっている。《Devil Charm》の能力を先に解決して強度を下げたあとで《Chisel》の能力を解決すれば、それだけで強度6以下のICEをトラッシュできてしまうのだ!
さらにお手軽に《Chisel》に貢献したければこの男を呼んでこよう。
《Null: Whistleblower》の能力は手札を捨てることによるICEの強度低下。誘発タイミングはやはりICEにエンカウントしたときなので《Chisel》の前に解決して事前に強度を下げることができる。
下がる強度の数値は2と控えめなものの、そこらの軽量なICEであれば十分トラッシュ圏内まで強度を下げられる数値。コストは手札のカード1枚なのでかなり手軽に起動できるというのも魅力。
より強いICEを対策したければ《Cookbook》で《Chisel》に最初からウィルスカウンターを置いてもよいし、《Ice Carver》でエンカウントする全てのICEの強度を下げるという手もある。これらを複合的に組み合わせればかなり高い強度を持ったICEでも触れるだけで破壊する凶悪なコンボが完成する。
理論的には強度10までのICEならばサブルーチンをブレイクすることなくトラッシュできる。アドバンスカウンターが3つ載った《Pharos》が役目を果たすことなくトラッシュされればコーポは泣きたくなるに違いない……。
今回の対戦では《Týr》をトラッシュする活躍を見せた。
《Simulchip》を使えばエンカウント前にインストールできるので、どのICEを狙うのも自由自在。強い!
《Chisel》サポートのためにICEの強度を下げるカードをたくさん採用したことで多大な恩恵を受けるカードがもう一つある。クレジットで強度を上げることができないアイスブレイカー――特に《Aumakua》だ。
《Aumakua》はICEの守りが全てのサーバーにいきわたっていない状態であればメキメキと成長する脅威のAIアイスブレイカーであるが、全てのサーバーをなんらかのICEで守られた状態を作られると途端に何もできなくなる弱点がある。ICEを突破するには強度が必要だが、強度を増やすにはICEを突破する必要がある、というデッドロックに陥ってしまうのだ。
ランナーが《Aumakua》を使っているのを見たコーポは、その対策のためにアーカイブを含めた全てのサーバーにICEを配置してウィルスカウンターをパージする。《Aumakua》の強度は0になり、この状態ではほぼICEを突破することはできない。ふう、これでもう安心。
ところが、《Null: Whistleblower》を始めとしたICEの強度を下げるサポートが充実していると、強度2や3のICE程度では《Aumakua》を止められなくなってしまう。デッドロック崩壊だ。そうなれば《Aumakua》はどんどん成長していってしまうので、コーポは再びパージを検討するか、高額なICEがやすやすと突破されるのを指を咥えて見てるほかなくなってしまうというわけ。
あれ、《Null: Whistleblower》と《Aumakua》の組み合わせ、意外と強いんじゃないか…!?!?
結構遊んでるつもりでもまだまだ新しい戦略を発見できるなんてなんて奥が深いゲームなんだ!
アンドロイド:ネットランナーはやっぱり最高のゲームだね。
よかったら☆を押してってね!
ネットランナー会レポート 22.04.29 『鮫型バイオロイド』
メガコーポの1つ、ハース-バイオロイド/Haas-Bioroid。その名の通りバイオロイドと呼ばれる機械式の人造人間を製造しており、その役割は単純な肉体労働だけでなく警備員、工作員やセクサロイドなど多岐にわたっている。
クローンによる人造人間を製造するジンテキ/Jintekiとはパイを奪い合う関係であり、ときには政治的活動によって足を引っ張ることで労働力のシェア拡大を目論んだりすることもあったりなかったりとか。
――もっとも、人間の労働者たちにとってはどちらも仕事を奪う気に食わない存在だったりするわけで、ハンマーを持って“打ちこわし”なんかを起こしてしまったりする。
アンドロイド:ネットランナーにおいてバイオロイドはHaas-Bioroid派閥のカードのサブタイプとして登場する。
特にバイオロイドICEは特徴的で、レゾコストに対して性能が良い代わりに、クリックさえ支払えばアイスブレイカーなしでも突破できるICEとしてプレイヤーに強く印象付けられているのではないだろうか。
そんな弱点を補うため、少しでもその能力を利用しにくくバージョンアップを果たした2.0や3.0が存在したり――
――《Týr》のようなタダでは転ばないようなICEも登場してきているなか、新たに面白い対策を備えたものが登場した。
《Hákarl 1.0》はMidnight Sun Booster Packで追加されたカードの1枚。レゾした時に他の自分のカードをデレゾすることでバイオロイドICE特有の弱点を無効化でき、クリックに余裕があるからと油断したランナーにブレンダメージを叩きつける。まさにその姿に相応しい凶暴さだ。
このときデレゾするカードはなんでもよいというのがミソ。レゾコスト0のカードをインストールしておけばデメリットを回避できるし、レゾ時に恩恵のあるカードと組み合わせれば繰り返し恩恵を受けられる……というのが今回の趣旨である。
Rez Twice
ゲームも終盤。ランナーのIDが《Rebirth》で《Omar Keung: Conspiracy Theorist》に転生して、最後の計画書を盗もうと厳重に守られたアーカイブへのランを開始した場面。
ランナーが最外殻のICEにアプローチし、カードのレゾと消費型能力が起動できる機会が発生する。コーポはICEをレゾする前に遠隔サーバーにインストールされていた《Advanced Assembly Lines》をレゾ。それから《Hákarl 1.0》をレゾする。《Hákarl 1.0》の効果でデレゾするのはさきほどレゾした《Advanced Assembly Lines》だ。
《Advanced Assembly Lines》はレゾ時に差し引き2クレジットを獲得できる資材。デレゾすればまたレゾできるのでちょっとしたお得感が得られる。
加えて、トラッシュすれば計画書以外のカードをクリックなしにインストールできる。この能力はなかなか便利で、例えばこの状況のように《Vladisibirsk City Grid》にアドバンスカウンターが2個乗った状態で、手札に計画書が欲しいけどない……みたいな状況であったとしても――
《Advanced Assembly Lines》をトラッシュしてHQの《Spin Doctor》をインストール――
レゾして2ドロー!といった動きがクリックなしに実現できるのである。……残念ながら計画書は引き当てられなかったが。。
ちなみに《Spin Doctor》もレゾ時に恩恵のあるカードなので《Hákarl 1.0》と相性がよい。
Tower of Death
こちらは《Hákarl 1.0》を使った別のデッキ。
《Anemone》を《Hákarl 1.0》でデレゾすることで何度でも使いまわせることを利用した即死トラップ。《Surat City Grid》を使うことで何かをレゾすれば連鎖的に全てのICEがレゾできるため、ランナーがフラットラインするまで一気にネットダメージの嵐を叩き込むことができる。
……はずだったが、このトラップはランナーがこのサーバーにランしてくれないと発動できない。こんな怪しいサーバーを頑張って建造しても、警戒心の強いランナーはそう簡単にはランしてきてくれない。
《AgInfusion: New Miracles for a New World》の能力を使えば、無理やりトラップのあるサーバーに飛ばすことができる。しかし、それで即死トラップが起動できるかというと世の中そう甘くはできていない。
《AgInfusion: New Miracles for a New World》の能力で飛ばしたサーバーの先にICEがあってもアプローチを飛ばしてエンカウントしてしまう(レゾされていなければそのままスルーしてしまう)。つまり、次にカードをレゾする機会を得られるまでにランナーはジャックアウトできてしまうのだ。
カードの組み合わせによってさまざまなギミックが楽しめるのもアンドロイド:ネットランナーの魅力。
次は実用性のあるものを見つけたいな……!
ネットランナー会レポート 22.04.22 『ウィルス式節約術』
4月23日(土)と24日(日)はゲームマーケット。開催は東京だから私は遠くから眺めているだけだけど、次大阪で開催するときはぜひ行きたいなぁ……。
前回は中止になってしまったし……;; 好きなゲームを山ほど買いたい!(そして遊びたい)
アンドロイド:ネットランナーでクレジットはMtGのマナのようにプレイヤーの行動の原動力として機能する。クレジットが不足するとせっかくのカードも思うように使うことができなくなってしまうので、デッキを組むのに慣れないうちはできるだけ沢山のクレジットを得るためのカードを入れるようにするとよいだろう。
たくさんクレジットが使えればいろんなカードをプレイできて、ランもたくさんできて気分爽快。
がっぽり稼いで単純に出力を上げる方法もあるが、今回紹介するのは節約術。ランにかかる費用を抑えて使えるクレジットを増やそう!をテーマにデッキを組んでみたので紹介しよう。
ウィルス式節約術
ランナーをプレイしていてこう思うことはないだろうか。
例えば、コーポのクレジット供給源である資材《PAD Campaign》をトラッシュしたいが――
――高い!!
トラッシュコストは4クレジット。これは《Sure Gamble》を1回プレイして得られる利益と同額。こういったカードにアクセスするたびにトラッシュコストを律儀に支払っていると、ランナーの財布はすぐにすっからかんになってしまう。
このクレジットがあれば1回多くランできるのに!――と思ったことのあるランナーも多いだろう。無駄な出費を抑えればそれだけ多く他のことにクレジットを割け、ランの回数も増え、計画書にアクセスする機会も増える。
つまり節約とは勝利への近道なのである。このようなトラッシュコストの支払いを免れれば大きな節約になり、その分勝利へと近づくことができる……はず。
そんな思想にぴったりなのがこの《Imp》というカード。《Imp》のアクセス時能力を使えばクレジットの支払いを踏み倒してトラッシュできる。
また、《Imp》の能力はトラッシュコストのないカードにも有効だ。もし任務/Operationやまだ盗めない計画書/Agendaにアクセスしてしまっても、慌てずトラッシュしてしまおう。捨てた計画書はあとでアーカイブから拾えばよいのだ。
ちなみに《Imp》が持っている『アクセス →/Access →』能力はカードにアクセスした際に任意で使用できる能力を消費型能力/Paid Ability化したもの。
このテキスト変更に合わせてアクセス時に消費型能力ウィンドウ/Paid Ability Windowが開くようにルールが改訂されており、アクセス時消費型能力ウィンドウではこの『アクセス →/Access →』能力だけが使えるようになっている。使用タイミングの指示をキーワード化しただけなので以前と性能に差はない……はず。
上記の変更によりいくつかのカードのテキストも変更されたが《Freedom Khumalo: Crypto-Anarchist》もその1つ。同様にウィルスカウンターを支払うことでアクセスしたカードをトラッシュできる能力を持つ。
《Imp》との違いはウィルスカウンターの支払いがどのカードの上にあるものでもよいことと、プレイコストもしくはレゾコストと同じ数だけ払う必要があるという点。
他にウィルスカウンターを生み出す手段を用意しておく必要があることと、《Hedge Fund》のようなプレイコストの高いカードやICEをトラッシュするには非効率であるという弱点があるものの、ゲーム開始時から有効であるのが魅力的。
資材や強化であればレゾコストが低いものが多いので特に有効だ。多くのコーポデッキに入っている《Spin Doctor》なんかウィルスカウンターなしでもトラッシュできるので、クレジットを浮かせることができる。地道に出費を抑えていこう。
削るべき出費はまだまだある。このゲームで最もクレジットが動くのがICEとのエンカウント時だ。ここもがっつり出費を削ってみよう。
Anarchのアイスブレイカーである《Black Orchestra》と《MKUltra》はヒープからインストールできる能力が便利な反面、強度が高くサブルーチンの数も多いICEの突破が非常に苦手。
どちらも3クレジットで「強度+2、サブルーチン2つまでブレイク」なので一見効率良さそうに見えるが、強度が足りていなければブレイクはせず、サブルーチンをブレイクしきれなければ無駄に強度を上げてしまう。例えば《Macrophage》を《Black Orchestra》でフルブレイク*1するなら12クレジットも必要になってしまうのだ。
一方《Paperclip》はといえばXクレジットで「強度+X、サブルーチンX個までブレイク」なので一切無駄が生じないばかりか、強度を合わせるのに必要なだけ支払えばサブルーチンのブレイクもついでに終わっているという高効率っぷり。壊れてる! 全部《Paperclip》で解決できたらいいのに……!
――と、そんな無茶な要求に応えるのがこのカード。
《Pelangi》の効果はエンカウントしているICEに対するサブタイプの付与。つまりあらゆるICEにバリアを付与して《Paperclip》で突破する、ということができてしまうわけだ。
《Macrophage》を《Paperclip》でフルブレイクするならコストは半額の6クレジット。まさに圧倒的節約!
このコストパフォーマンスの暴力を振るうのなら《Pelangi》はかなり頼りになる相棒と言えるだろう。アイスブレイカーが揃うまでの繋ぎとしても優秀なのは言うまでもない。
《Imp》も《Pelangi》もウィルスカウンターを残弾として使用するため、使用回数制限があることが気になる人もいることだろう。残弾補充のために何枚もインストールすればその分コストもクリックもかかってしまうのでやはり財布に優しくない。
でも大丈夫。Anarchはウィルスプログラムを使いこなすのが上手い派閥なのでサポートカードも豊富。特に《Knobkierie》や《Friday Chip》を使えばウィルスカウンターを自動補充できる。
これで残弾問題は解決だ。あとはとにかく安くランして無料でトラッシュしてコーポの計画をめちゃめちゃにしてやろう。
*1:サブルーチンを全てブレイクすること
ネットランナー会レポート 22.04.15 『コストと妨害』
《Deep Dive》強かったなぁ。また使いたいなぁ。……という気持ちで前回使った《Lat: Ethical Freelancer》のデッキの改良案を考えて過ごした今週。《Deep Dive》を序盤・中盤で打ち込むため、大量のドローソースを積み、持続性よりも瞬間的にクレジットが集められるようにカードを選び、スムーズにアイスブレイカーを揃えられる算段を整えていた。
時間をかけたおかげで結構自信のあるランナーのデッキができあがったものの、コーポの新しいデッキを用意する時間までは確保できなかった。こういうときはNetrunnerDBのDecklistsを覗いてみるに限る。様々なデッキのアイデアが投稿され続けているので、その中にはきっと新しい発見を与えてくれるものが見つかるはずだ。
Tower of Death combo 100% success rate! すごいタイトルだ。
面白そうなデッキを見つけることができたので、そのリストをちょっと調整してデッキ完成。毎度毎度新しいデッキを用意するのは大変なので、たまにはこういうのも悪くないだろう。
Obokata Protocol vs. Guru Davinder事件
今回の会での対戦中での出来事。コーポには十分なクレジットがあるはずにもかかわらず、ランナーをあるカードを見てからICEのレゾを拒否し続けている。一切の防御を放棄したのだ。
そのまま無防備にランされ続けるものの、コーポは計画書を守り切って勝利――という珍事。一体何があったのだろうか……!?
詳細を語る前に事件に関わる2つのカードを紹介しておこう。
1つ目は《Obokata Protocol》。
Jintekiの5/3計画書の1つで、Jintekiのデッキであればほぼ必ず入ると言ってもいいくらいの圧倒的シェアを誇る。収録は日本語版のあるRed Sandサイクルの『血と水/Blood and Water』データパックなので、馴染み深い日本人プレイヤーも多いだろう。
その特徴は盗むのに4ネットダメージのコストを課す自己防衛能力。Jintekiという派閥と非常に相性が良く、執拗なネットダメージの嵐を掻い潜ってこれを盗み出すのは非常に困難。
ただでさえ盗まれにくい計画書自身の効果に加え、手札を減らしてくる《Data Loop》や最近登場した《Anemone》といったICEで守られてたり、盗んで手札が減ったところを《Punitive Counterstrike》で狙い撃たれたりと、厄介な組み合わせにも事欠かない。まさにJinteki最強計画書の1つと言える。
2つ目は《Guru Davinder》。
影響値持ちの中立リソース。インストールしている間ネットダメージもミートダメージも全てシャットアウト。5回アドバンスされた《Project Junebug》にアクセスしようとコーポに《BOOM!》されようと無傷でいることができる。まさに無敵の鎧。
ダメージを妨害するたび4クレジット払わなければ自壊してしまう。続けて使用するなら1回あたり4クレジットのコストがかかると同義だろう。1ネットダメージを妨害するために3クレジット必要な《Caldera》と比較すると、何ダメージ受けようと一律4クレジットでノーダメージ!……と優れていそうに見えて、細かくダメージを与えてくる相手には毎回4クレジット払わないと維持できない。
どちらがコストパフォーマンスに優れるかはコーポのスタイルによるが、どデカいダメージでランナーを吹き飛ばそうと考えているコーポにとっては出てくるだけで眉をひそめたくなるカードだ。
4ネットダメージを受けないと盗めない《Obokata Protocol》、受けるダメージを無効化する《Guru Davinder》。
さて、この2つがかち合うと何が起きるのだろうか。これを理解するために、アンドロイド:ネットランナーの細かいルールを紹介しておこう。
コストと妨害
カード自体のプレイやカードが持つ能力の起動には大抵コストが設定されている。カードの能力のうち、アクション/Actionや消費型能力/Paid Abilityの「:」の左側に書いてあるものがそうだし――
――少しややこしいが「〇〇しないかぎり△△/△△ unless 〇〇」というテキストの〇〇の部分も△△しないためのコストだったりする。
先ほど挙げた《Obokata Protocol》の能力、「盗むための追加コストとして4ネットダメージを受けなければならない」ももちろんコストだ。
コストの支払いは常に1か0。要求された全額を支払うか、支払いの一切を拒否するか、常にこのどちらかである。
《Obokata Protocol》の場合、4ネットダメージを受けてこれを盗むか、4ネットダメージを受けないことを選んで盗むことを拒否することになる。例え《Caldera》をインストールしていたとしても、コストとして支払うこのダメージの軽減を選ぶことができない。
しかし、妨害することが強制されるのであれば話は別。そこにプレイヤーの意思は介在しないため、妨害するしないの選択肢はない。常に妨害されてしまうためだ。
《Guru Davinder》のダメージを妨害する効果はプレイヤーに選択権のない強制効果なので、この効果が有効であるうちに《Obokata Protocol》アクセスしたランナーは常に「4ネットダメージを受ける」を選ぶことができない。その結果どうなるかと言えば――
――《Obokata Protocol》にアクセスしても盗むことができなくなってしまうというわけだ。
もちろんこれでランナー勝利のチャンスが潰えてしまったわけではない。
コーポのデッキには11点分の他の計画書が含まれているし、何らかの手段でコスト以外のダメージを受けて《Guru Davinder》の呪縛から解放されれば再び《Obokata Protocol》を盗めるようになるからだ。
ランナーは他の計画書やダメージソースに出会うことを期待してひたすらラン。コーポはランナーの《Guru Davinder》がトラッシュされないようICEのレゾを控える。
長い我慢対決の始まりだ。
ランナーをフラットラインさせる即死コンボを仕込んだデッキで、ランナーがダメージを受けないように戦うなんて、一体誰が想像できただろうか。ランナーがせっかくかかった《Prisec》を起動させずにトラッシュさせるなんて、一体だれが想像できただろうか。うーん、もったいない……!
Jintekiを相手にしていて《Guru Davinder》を使うときは、自分でトラッシュする手段を用意するか、ダメージを受ける手段を確認してからインストールするのが良さそうという教訓を得て今回はここまで。
また来週。
ネットランナー会レポート 22.04.08 『Deep Dive』
今回はランナー強化週間と息巻いて気合を入れてデッキを用意した。
前回(前々回も)一切ランナーで勝てなかったのがよほど悔しかったのだろう。それに、Standardの環境に戻ったら再現したかったデッキと、ちょうど使ってみたかったカードもあった。
《Deep Dive》。Midnight Sun Boosterの1つ。その効果はR&Dのトップ8枚を除外してその中から1枚アクセスするというもの。除外したカードはあとでR&Dにシャッフルする。
1つ前のAshesサイクルでリリースされその強さが認められた《Khusyuk》でさえ周到な準備を重ねてやっと6枚の中から1枚アクセスできるところ、このカードはそれよりも2枚多い8枚から選べる。更にクリックの追加消費で2枚目にもアクセスできるのだから、これ1枚のプレイで4点5点分の計画書を盗み出すことも可能。通せば勝ちのまさにフィニッシャーといえるカードだ。
プレイするためには《Apocalypse》や《Encore》よろしく中央サーバー全てのランに成功していなければならない。しかし、その条件さえ満たしてしまえば更に2枚目3枚目をプレイすることだって可能だ。
兎にも角にも《Deep Dive》の真価を発揮するには3回のランのあとどれだけクリックを余らせることができるかにかかっている。
クリックを余らせる方法その一は使えるクリック自体を増やすこと。
Shaperはそもそもクリックを増やすことに長けた派閥なので様々なカードを持っている。だからこそ第5クリック目を要求する《Deep Dive》がデザインされたのだろうけど。Standardでならこの2枚が無理なく採用できるだろう。
《Beth Kilrain-Chang》はコーポのクレジットに依存してランナーになにか提供してくれるコネ/Connectionリソース。
コーポが5クレジット以上持ってさえいれば継続的に何かしら利益があるので入れ得カードの1つ。ただし目的の追加クリックを得るにはコーポが15クレジット以上の大金を貯め込んでいる必要があるので、いざというときに確実にクリックが貰える保証はない。が、《Peace in Our Time》で無理矢理コーポの所持クレジットを増やす手はある。
《Temple of the Liberated Mind》を使えば余ったクリックをパワーカウンターとして貯めておき、引き出すことができる。《All-nighter》と違ってクリックレスにクリックを得られるので、必要になったそのときに引き出す判断をすることができるのが魅力。
Shaper以外にもクリックを増やす手段は存在するのだが、それらを採用するかは影響値と相談して決めよう。
次に紹介するのはこのカード。
《Out of the Ashes》。実行するのは特別な効果などなにもないただのラン。プレイするだけならなんのアドバンテージも生みやしないが、その真価はヒープに落ちてから発揮される。
ヒープの《Out of the Ashes》を除外して効果発動! ランを開始する!
……やっぱり普通のランじゃないか。
いやいや、これはただのランではない。ターン開始時に誘発した効果であり、このランはランナーがクリックを支払うことなく開始できる、クリックレスなランである。クリックを使わずに中央サーバーを回れれば、その分クリックを余らせることができるというわけだ。クリックを余らせる方法その二である。
Sunny Lebeauの《Jak Sinclair》も同様にクリックなしにランすることが可能。このラン中にプログラムが使えない制限をうまく御せるのであればランの回数稼ぎに貢献できるはずだ。
ありとあらゆる手段を尽くして《Deep Dive》のためのクリックを用意したら、あとは中央サーバーへのランを成功させるだけ!
というわけで対戦。相手は《Gagarin Deep Space: Expanding the Horizon》。
これはツイてる。アセットスパム*1なら中央サーバーの守りは薄いはずだ――
……
……
――って、薄くねーー!!
HQを守っているのは《Fire Wall》、R&Dには《Pharos》が鎮座している。どちらも強度が高く、しかもその強度はアドバンスカウンターでさらに成長する。遠隔サーバーでは《Wall to Wall》が稼働しているのでさっさとトラッシュした方が良いのだが――
――ああ、ほら言わんこっちゃない!
強度10はあの《Paperclip》でも突破に9クレジット必要な硬さ。
Shaper相手にR&Dを全力防御の構え。みすみす通す気はないらしい。……そもそも《Paperclip》をまだインストールできていないのでクレジットがあっても突破はできないわけだが。
中央サーバーがダメなら遠隔サーバーだ! コーポの得点を妨害し、《Deep Dive》発動までの時間を稼がねばならない――
――が、ダメ……!
どこもかしこもバリアまみれ。一刻も早くバリアを突破できるアイスブレイカーをインストールせねばならない。
コーポはランナーがバリアを突破できないと知るやいなや、チャンスとばかりに得点を推し進めてくる。遠隔サーバー(Server 2)にインストールされたカードは十中八九計画書だ。
このままでは得点を許してしまう。
《Beth Kilrain-Chang》の効果により1クリック増えて5クリックスタート。ドローだ! 必要なカードが出るまで引きまくれ!
1クリック目!
《Multithreader》! 違う、これじゃない!
2クリック目もドロー!
《Diesel》! これも違うがまだチャンスはある。
3クリック目《Diesel》をプレイで3枚ドロー!! うおぉ! 炎を授けてくれ!!
来たきたキタ《Self-modifying Code》!
まだあと2クリックある。せっかく掴んだチャンスを逃してなるものか! インストールしてランだ!
《Self-modifying Code》の能力を使い《Paperclip》をスタックからインストール、《Ice Wall》を突破。続くICE《Mausolus》も《Unity》で無力化しサーバーへ侵入!
計画書Steal成功! コーポの4点目を阻止できた。ただしクレジットはすっからかんに。せっかくアイスブレイカーを揃えても動かすためのクレジットがなければ元の木阿弥(もくあみ)である。
この隙にコーポはさらに計画書を得点。遠隔サーバーにカードを仕込んで2アドバンス。
もし3点計画書なら見逃せば敗北。決死の思いでランするものの、残念ながら《Vladisibirsk City Grid》だった。
無念にも1クレジット不足でトラッシュならず。このまま放置すれば、コーポが計画書をドローするたび即得点されてしまう。大ピンチ。
ここまでくるともはやどちらが先に計画書に辿り着けるかの勝負になってくる。
2ターンほどクレジットを貯めることに費やし、ターン開始時点で20クレジットを確保。コーポの所持クレジットは5なので《Beth Kilrain-Chang》がくれるのはクレジットだが、《Temple of the Liberated Mind》には既にカウンターが載せてある。
いけるか……!?
行ったれーー!! ヒープの《Out of the Ashes》を除外。アーカイブへラン!
続けてHQへ! 《Multithreader》からのクレジットを吐き切る。
さらにR&Dへラン! 強度10の《Pharos》を越えてR&Dへ到達。アクセスしたカードはトラッシュしておいた。
中央サーバーそれぞれのランに成功。さあて、お楽しみの時間だ。
魅せてくれ! 《Deep Dive》発動!!
R&Dのトップ8枚を公開。
計画書はあるか……!?
あったーー! しかも4枚も!
残り2クリックあるので2枚まで盗めるが、3点の《SDS Drone Deployment》さえ盗めば7点到達で勝利である。というわけでGG!……っていうか計画書出すぎでは!?!?
見たか《Deep Dive》の威力! やみつきになりそう。
後半でコーポが計画書を引けずに逃げきれなかった幸運に助けられたゲームだった。
フィニッシャーとしての威力は申し分ないが、発動するまでに時間がかかりすぎればこの威力を振るう機会のないままゲームが終わってしまう可能性もある。
しかし、もしこの威力を序盤中盤から振るうことができればコーポにとって大きな脅威になることは間違いない。素早く中央サーバーを回る工夫を凝らしたランナーのデッキで再挑戦してみたいところだ。
*1:資材を大量に並べる戦術
ネットランナー会レポート 22.04.01 『エイプリルフール?』
アズ・マキャフリー/Az McCaffrey。彼はNiseiによって最も早くお披露目されたオリジナルキャラクターだ。《Az McCaffrey: Mechanical Prodigy》としてNisei一番最初の拡張Downfallで追加された。
名前に見覚えはないだろうか? ――そう、マキャフリー/McCaffreyといえばアンドロイド:ネットランナー最初の基本セットに収録された《Kate "Mac" McCaffrey: Digital Tinker》と同じ姓。設定上、ケイトは彼の母親にあたるのである。
ID能力は毎ターン最初にインストールするハードウェアおよび仕事/Jobもしくはコネ/Connectionリソースのインストールコストを1下げるというもの。リソースはともかく、ハードウェアってそんなにたくさんインストールする機会があるものだっけ……?
それがあるんだなぁ。それがこの《Boomerang》だ。
《Boomerang》はICEのサブルーチンをブレイクできるハードウェア。自身をトラッシュすることで強度に関係なくサブルーチン2つをブレイクできるため、アイスブレイカーが揃うまでの繋ぎとしてや、強度の高いICEを安く突破する手段として序盤から終盤まで活躍を見込める。
しかもこのカード、使い終わってもヒープからスタックに戻すことができるため、再びドローすれば何度でも利用できる。まるでブーメラン。使うたびにインストールすることになるので、《Az McCaffrey: Mechanical Prodigy》とは相性ピッタリというわけだ。ただし、ランに成功していなければ《Boomerang》は戻ってこないので要注意。
さてこの《Boomerang》、使い終わっても戻ってくるのはいいものの、スタックはシャッフルされてしまうため次いつ使えるようになるのかわからないという弱点がある。このカードにがっつりと頼ることを考えているならば、スタックのどこかに潜んでいて次いつ使えるようになるかわからないというのではあまりにも不安定だ。
コーポの強力なICEを低コストで悠々と通過してやりたい……もとい、《Boomerang》を再回収して激しく使いまわしたい……。そんな願望を実現するため、とある策を講じることにしたのである。それは――
ドロー!
たくさんドローすればそれだけスタックの《Boomerang》を引く確率が上がるし、たくさんドローしてスタックのカードを減らせばスタックに戻った《Boomerang》もまた引きやすくなる――という実に単純な理屈だったりする。
問題はその手段。《Diesel》を始めとした使いやすいドロー手段を多く持つShaperや豪快にドローしてヒープにカードを溜めるAnarchと違い、Criminalはドローの質にこだわる派閥であり、何でもいいから大量にドローするといったことは苦手だったりする。如何に素早くカードをドローできるようにするかが課題だ。
まず試してみたのは《Exclusive Party》。Mumbadサイクルに存在する、デッキに6枚まで入れることができるカード群の1つだ。
最初は単に1枚ドローするだけのイベントカード。イベントはプレイすると捨てられるので、グリップのカードは1枚減って1枚増えるので差し引きゼロ!
その代わり、ヒープにある《Exclusive Party》の枚数を参照してクレジットを得ることができる。1枚がヒープにあればスタックを1枚掘り進めつつ1クレジット、2枚あれば2クレジットと後半になるにつれて効果が大きくなり、最終的に1クリック1ドロー5クリックにまでなる。相変わらず手札を増やすことはできないが、クレジットを稼ぎつつスタックから新しいカードを得られるので、迅速にスタックを減らすのに貢献してくれそうだ。
実際に対戦で使ってみれば《Exclusive Party》は思ったように機能する。序盤はスローながらもクレジットを稼ぎつつテンポよくスタックを減らしていけるのだ。
しかし、「手札が増えない」のはやはり弱点でもある。ランナーのグリップ*1の枚数はランナーのHPとしても機能するため、多大なダメージを受ける可能性がある場合にはそれに備えて手札にカードを多く握っておきたいもの。
特にJintekiとの対戦では容易にネットダメージが飛んでくる。不意のダメージでフラットラインしないよう常にグリップの枚数には気を使っておく必要があるほか、計画書《Obokata Protocol》をいつでも盗めるようにしておきたい。
最後はアーカイブに仕込まれていた《Bacterial Programming》を盗まされ、その返しのターンで《Punitive Counterstrike》されてフラットライン。や~ら~れ~た~!
くっ……! 事前に他の計画書を盗めていればこんなことには……。
やはり手札は枚数が正義! 枚数だ! 枚数を確保するのだ!!
《Exclusive Party》6枚を抜いて《Career Fair》と《Earthrise Hotel》に交換。《Earthrise Hotel》は3ターンの間自動で2枚ずつドローしてくれるのでクリックなしに手札の枚数を確保してくれる。その代わりインストールコストがかさむので《Career Fair》でカバー。
しかし今度はクレジット不足で大苦戦。《Exclusive Party》が担っていたクレジット収入分を失った結果、4/2計画書をファストアドバンスする要となる《Vladisibirsk City Grid》をトラッシュするためのクレジットを確保できなくなり、《Light the Fire!》で対処するはめになるのだった。いやー、バランスって難しい。
結果コーポ相手の2戦ともボロボロに敗北。Standardに復帰してからランナーで勝ってない気がする。早々に勘を取り戻さねば……!
次こそはランナーで勝ちたい!!
そういえばエイプリルフールだったのか、カードのイラストに帽子が書き加えられるイベントが発生していた。
今はもう見ることができないので、Discordに貼った画像の中から一部だけだが紹介しよう。
この帽子、実は《Bass CH1R180G4》のイラストにあるものである。
なぜ帽子なのかは全然わからないが、なかなか芸が細かい。
*1:手札
ネットランナー会レポート 22.03.25 『ICEをデッキから特殊召喚!』
食らえ! 強度20の《Bulwark》だ!!
――としてたのが先週のRAMフォーマットでの対戦。Jinteki.netのリプレイ機能が復旧したので、前回の記事で貼れなかったせっかくの名場面(?)を画像として残しておくことにする。
2週間ローテーションでカードプールを入れ替えるRAMフォーマットには一旦別れを告げる。Midnight Sun Booster Packで追加されたカードを試すなら、やはりStandardフォーマットで遊ぶのが一番だろう。
実に10週間ぶりのStandard。RAMフォーマットの不規則な環境でデッキ構築に勤しんでた期間が長いのでかなり感覚が狂ってしまった感も否めないが、それは時間が解決してくれるだろう。そしてさらば現状/Current!
コーポデッキを作成するにあたって新しく対策を考えなければならない新カードといえば、そう、《Light the Fire!》!
ランの間、サーバー内(サーバーのルート)にインストールされたカードの効果を無効化するので、サーバーの防御を強化/Upgradeに頼っていると、このカードでいとも簡単に突破されてしまう。
さて、サーバーの防御を強化に頼っているデッキといえば《Manegarm Skunkworks》と《Anoetic Void》を使った《Haas-Bioroid: Precision Design》のデッキ。遠隔サーバーをこの2枚の強化で守りつつ、アドバンスなしに4/2計画書をインストール。次のターンに《Seamless Launch》での得点を狙う。以前のまま運用すれば明らかなメタカードである《Light the Fire!》に存在を脅かされることはまず間違いない。
コーポはどのようにこの脅威に立ち向かうべきか?
答えはいくつかあるだろう。私はこのデッキのコンセプトを極力崩さないまま《Light the Fire!》に対抗するべく、あるカードに着目した。
《Remote Enforcement》。得点するとR&DからレゾされたICEが飛び出てくる。
《Haas-Bioroid: Precision Design》のデッキで運用される4/2計画書は《Offworld Office》と《Cyberdex Sandbox》で得点時にクレジット収入があり、それぞれ7クリック相当の仕事をする。対して《Remote Enforcement》はR&Dから引いた(サーチした)カードをインストールしてレゾするので、2クリック+レゾコスト分。
例えば、レゾコスト10の《Týr》をレゾできれば12クリック相当のアドバンテージと考えられるのではないか。――そんな風に思えば《Offworld Office》より強そうに見えてきた気がする。
実戦
ランナーの1ターン目にHQへの侵入を許し、既に1枚計画書を盗まれた状態で迎えたコーポの3ターン目。《Rashida Jaheem》による3ドローと強制ドローで4枚カードを引く前から計画書を3枚HQに持ち、このドローで更に追加で1枚引いてきた。このコーポのデッキには9枚の計画書が入っているが、その半分以上がR&Dから出てきている。MtGでいうならマナフラッド。いわゆる“事故ってる”という状態。
ドローに運が絡む以上、発生するときは起きてしまう。こうなったときは手札の状態を恨む前に、何事もなかったかのように冷静にプレイを続けることが肝心だ。
直接相手の顔が見えなくてもポーカーフェイスを心掛けよう。大丈夫、HQに計画書が大量にあることがバレなければよいのだ。あとは《Legwork》されないことを祈れ!
幸いなことに《Lateral Growth》も引いているので、HQのこの大量のカードは容易に手札上限以下まで消費することができる。インストールしながらクレジットも稼げるのでテンポよく防御を固めることが可能だ。
ちょうど《Remote Enforcement》とそれを守れるICE、さらに《Seamless Launch》も握っているし、攻めるならこのタイミングだろう。
3クリック目はドローを選択。ICEをR&Dにインストールすることもできたが、既にHQに3枚も計画書を抱えている状態で、これ以上手札のカードを減らすわけにはいかなかったのだ。
ところが、この作戦は完全に裏目に出ることになる。
《Falsified Credentials》による開示で遠隔サーバーにインストールしたのが計画書であることがバレたのち、その攻略を諦めたランナーはICEのないR&Dへラン。
コーポ視点では28枚の山札に4枚の計画書が含まれているので、そこから計画書が盗まれる確率は1/7≒14%。まだまだ平気だと高をくくっていたら、あれよあれよと計画書が盗まれていき……
気がついたらスコア0-6! あと1枚計画書盗まれたら終わり! もう負けたかと思った!! 28枚中の4枚のうち2枚が山札トップってどんな確率だよ!
9枚中7枚の計画書がランナーの3ターン目に出てくるなんて大事故もいいところ。
だが勝負は諦めない。手札の中身はまだランナーにはバレてない。それにここからが良いところだ。
《Seamless Launch》を使って2アドバンスカウンターを置き、さらに2回アドバンスして4/2計画書《Remote Enforcement》を得点。その効果によりR&Dから《Fairchild》を召喚!
見よこの強度を。見よこのサブルーチンを。
ランナーを通さないという意志がひしひしと伝わってくるこの性能。ランナーが多大な犠牲を払えば通れなくもないあたりはバイオロイド/Bioroidとしての特徴を残すものの、それでもランの継続を阻むプレッシャーは絶大なもの。
それをスコア用に築いた遠隔サーバーにどかっと上乗せする。これで《Light the Fire!》以前にサーバーにアプローチすること自体かなり難しくなったはずだ。
しかしランナーも負けじと対抗策を繰り出してくる。R&Dのトップを覗いて計画書がないことを確認すると、レゾされたばかりの《Fairchild》に《Tranquilizer》をインストール。このウィルスに感染したICEは2ターン後にデレゾされてしまう。
このままでは守りの要を失ってしまう。《Fairchild》をデレゾされてしまえば、クレジットの余裕がそれほどないこのデッキでは二度とレゾできないだろう。
しかし秘策がないわけではなかった。
すぐさま2枚目の《Remote Enforcement》をインストール。次のターンに得点。
R&Dから呼び出すのは《Magnet》だ!
《Magnet》を新規リモートサーバーを守る位置にインストール。レゾ時効果でICEに搭載されたプログラムを1つ選択する。標的はもちろん《Fairchild》に取り付いた《Tranquilizer》……!
《Remote Enforcement》でレゾコストの低い《Magnet》を召喚する使い方は想定していなかったが、結果オーライ。思い付いた者勝ちである。
このターンが終われば《Fairchild》はデレゾされてしまっていたので、思わずHQで溢れかえっていた計画書に救われた形となったのだった。
その後、この《Fairchild》による防御を頼りにHQにある残りの計画書を順番に得点していきゲームセット。GG!
R&Dを開けっ放しにしたことによって連続で計画書を盗まれてしまったし、HQの計画書をテンポよく得点するために防御にもクリックを割く余裕が全くなかった。ずっと危ない橋を渡り続けることになったのでなかなか心臓に悪いゲームだったと言える。
ちなみにずっとR&Dにランすることにクリックを捧げたランナーのリグは終始こんな感じであった。アンドロイド:ネットランナーがアクションのゲームだというのがよくわかる。
今回使ったこのコーポデッキは《Seamless Launch》と新カード《Vladisibirsk City Grid》の組み合わせを試すことも計画していたが、このゲームでは最後の最後にようやくドローできたためその機会は訪れなかった。また別の機会に試すとしよう。
ではまた来週。