Diesel

ボードゲームを中心とした記事を書きます。

ネットランナー会レポート 22.04.15 『コストと妨害』

 《Deep Dive》強かったなぁ。また使いたいなぁ。……という気持ちで前回使った《Lat: Ethical Freelancer》のデッキの改良案を考えて過ごした今週。《Deep Dive》を序盤・中盤で打ち込むため、大量のドローソースを積み、持続性よりも瞬間的にクレジットが集められるようにカードを選び、スムーズにアイスブレイカーを揃えられる算段を整えていた。

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 時間をかけたおかげで結構自信のあるランナーのデッキができあがったものの、コーポの新しいデッキを用意する時間までは確保できなかった。こういうときはNetrunnerDBのDecklistsを覗いてみるに限る。様々なデッキのアイデアが投稿され続けているので、その中にはきっと新しい発見を与えてくれるものが見つかるはずだ。

 

お、なんか面白そうなの発見

 Tower of Death combo 100% success rate! すごいタイトルだ。

 面白そうなデッキを見つけることができたので、そのリストをちょっと調整してデッキ完成。毎度毎度新しいデッキを用意するのは大変なので、たまにはこういうのも悪くないだろう。

 

 

Obokata Protocol vs. Guru Davinder事件

絶対にレゾしてやるもんか!

 今回の会での対戦中での出来事。コーポには十分なクレジットがあるはずにもかかわらず、ランナーをあるカードを見てからICEのレゾを拒否し続けている。一切の防御を放棄したのだ。

 そのまま無防備にランされ続けるものの、コーポは計画書を守り切って勝利――という珍事。一体何があったのだろうか……!?

 

 

 詳細を語る前に事件に関わる2つのカードを紹介しておこう。

 

 1つ目は《Obokata Protocol》。

どこかで聞いた名前

 Jintekiの5/3計画書の1つで、Jintekiのデッキであればほぼ必ず入ると言ってもいいくらいの圧倒的シェアを誇る。収録は日本語版のあるRed Sandサイクルの『血と水/Blood and Water』データパックなので、馴染み深い日本人プレイヤーも多いだろう。

 その特徴は盗むのに4ネットダメージのコストを課す自己防衛能力。Jintekiという派閥と非常に相性が良く、執拗なネットダメージの嵐を掻い潜ってこれを盗み出すのは非常に困難。

 ただでさえ盗まれにくい計画書自身の効果に加え、手札を減らしてくる《Data Loop》や最近登場した《Anemone》といったICEで守られてたり、盗んで手札が減ったところを《Punitive Counterstrike》で狙い撃たれたりと、厄介な組み合わせにも事欠かない。まさにJinteki最強計画書の1つと言える。

 

 

 2つ目は《Guru Davinder》。

 影響値持ちの中立リソース。インストールしている間ネットダメージもミートダメージも全てシャットアウト。5回アドバンスされた《Project Junebug》にアクセスしようとコーポに《BOOM!》されようと無傷でいることができる。まさに無敵の鎧。

 ダメージを妨害するたび4クレジット払わなければ自壊してしまう。続けて使用するなら1回あたり4クレジットのコストがかかると同義だろう。1ネットダメージを妨害するために3クレジット必要な《Caldera》と比較すると、何ダメージ受けようと一律4クレジットでノーダメージ!……と優れていそうに見えて、細かくダメージを与えてくる相手には毎回4クレジット払わないと維持できない。

 どちらがコストパフォーマンスに優れるかはコーポのスタイルによるが、どデカいダメージでランナーを吹き飛ばそうと考えているコーポにとっては出てくるだけで眉をひそめたくなるカードだ。

 

 

 4ネットダメージを受けないと盗めない《Obokata Protocol》、受けるダメージを無効化する《Guru Davinder》。

 さて、この2つがかち合うと何が起きるのだろうか。これを理解するために、アンドロイド:ネットランナーの細かいルールを紹介しておこう。

 

コストと妨害

 カード自体のプレイやカードが持つ能力の起動には大抵コストが設定されている。カードの能力のうち、アクション/Actionや消費型能力/Paid Abilityの「:」の左側に書いてあるものがそうだし――

アクション(左)と消費型能力(右)

 

――少しややこしいが「〇〇しないかぎり△△/△△ unless 〇〇」というテキストの〇〇の部分も△△しないためのコストだったりする。

unless

 

 先ほど挙げた《Obokata Protocol》の能力、「盗むための追加コストとして4ネットダメージを受けなければならない」ももちろんコストだ。

4ネットダメージを受けることがコスト

 

 コストの支払いは常に1か0。要求された全額を支払うか、支払いの一切を拒否するか、常にこのどちらかである。

 《Obokata Protocol》の場合、4ネットダメージを受けてこれを盗むか、4ネットダメージを受けないことを選んで盗むことを拒否することになる。例え《Caldera》をインストールしていたとしても、コストとして支払うこのダメージの軽減を選ぶことができない。

 

 しかし、妨害することが強制されるのであれば話は別。そこにプレイヤーの意思は介在しないため、妨害するしないの選択肢はない。常に妨害されてしまうためだ。

 《Guru Davinder》のダメージを妨害する効果はプレイヤーに選択権のない強制効果なので、この効果が有効であるうちに《Obokata Protocol》アクセスしたランナーは常に「4ネットダメージを受ける」を選ぶことができない。その結果どうなるかと言えば――

「盗まない」しか選べない

――《Obokata Protocol》にアクセスしても盗むことができなくなってしまうというわけだ。

 

 もちろんこれでランナー勝利のチャンスが潰えてしまったわけではない。

 コーポのデッキには11点分の他の計画書が含まれているし、何らかの手段でコスト以外のダメージを受けて《Guru Davinder》の呪縛から解放されれば再び《Obokata Protocol》を盗めるようになるからだ。

 ランナーは他の計画書やダメージソースに出会うことを期待してひたすらラン。コーポはランナーの《Guru Davinder》がトラッシュされないようICEのレゾを控える。

 長い我慢対決の始まりだ。

 

 ランナーをフラットラインさせる即死コンボを仕込んだデッキで、ランナーがダメージを受けないように戦うなんて、一体誰が想像できただろうか。ランナーがせっかくかかった《Prisec》を起動させずにトラッシュさせるなんて、一体だれが想像できただろうか。うーん、もったいない……!

 

 Jintekiを相手にしていて《Guru Davinder》を使うときは、自分でトラッシュする手段を用意するか、ダメージを受ける手段を確認してからインストールするのが良さそうという教訓を得て今回はここまで。

 また来週。

 

 

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