ネットランナー会レポート 22.03.18 『強力なアイスブレイカーとの戦い方』
アンドロイド:ネットランナーというゲームにおいてランというのはランナーにとってもコーポにとっても最もドキドキする瞬間の一つ。それが計画書がインストールされた遠隔サーバーへのランであれば尚更である。コーポはランナーのリグ――つまりインストールされたカード――を眺め、ランナーの所持クレジットと守りの突破に必要なコストを比較し、入念な準備のもと――ときには不意を突いて――計画書の得点を企てるし、ランナーはコーポがいつ行動を起こしても対応できるように隠し玉を用意し、コーポの予想を裏切る準備をする。その時がくれば両者の秘策が激しくぶつかり合うのだ。
ランナーに計画書を盗まれたくないコーポはどのように対策するだろうか?
まずICEで守りを固める。ランナーは対策なしにそれを突破できず、アイスブレイカーが揃うまでは十分な時間稼ぎになる。ランナーが対抗策を用意してきたらICEの役目はランナーにクレジットの負担をかけることにシフトする。ランを終了したり計画書を盗むことを妨害するのは強化/Upgradeの役目となる。突破するのに複数回ランが必要ともなればその分必要コストは2倍にも3倍にもなるわけだ。
今回のカードプールにはランを強制終了するような強力な強化は含まれていない。計画書を盗むのに追加コストを課す《Strongbox》と《Red Herrings》は存在するもののこれらは他のカードとシナジーを発揮してこそ効果があるというもの。さらには計画書を盗まずに掻っ攫っていく厄介なカードも存在しているので、そもそも計画書をランナーに触れさせたくない……。
……となるとやはりICEで勝負するしかない。強力なICEで守りを固め、ランナーに突破しようという気を起させないような強固な壁を築くのだ。
本来なら対戦画面のスクリーンショットを貼りながらどんな感じの対戦だったか説明するのだが、Jinteki.netの不調でリプレイデータのダウンロードはおろかリプレイの再生もできないのでスクリーンショットをお見せできない。残念だ。
相手のランナーIDは《Kate "Mac" McCaffrey: Digital Tinker》。Core Setに収録されている一番最初のShaperだ。
対するこちらのコーポIDは《Weyland Consortium: Building a Better World》。やはりCore Setに収録された最初のWeyland Consortium ID。手堅いICEといえばやはりこの企業のイメージがある。
Core Setに収録されているWeyland Consortiumの強力なICEの代表格といえば《Hadrian's Wall》そして《Archer》。
《Hadrian's Wall》は《Pharos》が存在する環境ではやや時代遅れな印象があるが、それでも分厚い壁であることには違いない。高い強度はアイスブレイカーでの容易な突破を許さない。……《Laamb》さえ存在しなければかなり頼れるICEたりえただろうが。
この白い腕はコーポが10クレジットかけてレゾしたこのICEをたった5クレジットで突破してくる。おまけに1ターンに1度だけサブタイプにバリアを付与する能力持ち。驚異の突破力に加え必要影響値がたったの2なのでどの派閥でも採用は容易く、どのランナーにもほぼ間違いなく採用されるだろう。
ついでに対となる《Engolo》まで揃っている。強度の高いコードゲートも易々と突破されてしまうことは想像に難くない。となればやはり頼るべきはセントリー/Sentryだ。
《Archer》はレゾに一苦労する代わりに高い強度と強力なサブルーチンを持っている。ランナーのプログラムを2枚もトラッシュできるうえランの終了までこなす万能選手。これほど頼りになるICEは他になかなかない。デレゾされると泣きそうになるけど。
これで憎き《Laamb》と《Engolo》を吹き飛ばしたくないか? 私は吹き飛ばしたい。
対戦が始まってすぐランナーのリグには《Magnum Opus》がインストールされ、クレジットを一気に押し上げる。早いタイミングで《Laamb》も登場し、ICE1枚では最早計画書を守ることはできなくなってしまった。《Laamb》だけで突破されないよう、バリア以外のICE2枚以上で得点用遠隔サーバーを築く必要がある。
この状況で頼りになったのは《Changeling》だった。このICEの上のアドバンスカウンターが奇数個であれば自身のサブタイプを変更。1アドバンスしておけば『ランの終了。』を持ったバリアからセントリーに早変わりするのだ。しかも高い強度のおかげで《Laamb》がこれ1枚を突破するのに合計7クレジット(サブタイプ付与に2、強度変更に3、ブレイクに2)もかかる。突破されてしまうにしてもランナーの財政に大ダメージを与えられる。
《Changeling》を遠隔サーバーを守る3枚目のアイスとして最外殻にインストール。既にセントリーである《Surveyor》も同じサーバーを守っているので《Laamb》だけで突破するのは骨が折れるぞ!
――と思っていた矢先に《Engolo》まで登場。同様にサブタイプを付与する能力を持っているので、クレジットさえ十分にあれば《Laamb》と合わせてどんなICEが来てもぶち抜かれてしまう。《Magnum Opus》のおかげでランナーの資金は潤沢。さてどうする……?
答えは既にサーバー内にインストールされていた。
《Laamb》と《Engolo》は1ターンに一度だけそれぞれICEにバリア、コードゲートのサブルーチンを付与して突破することができる。つまりセントリーを突破できるキラーのアイスブレイカーを持っていなくても、セントリーとのエンカウント2回までならサブルーチンを付与して突破できるということだ。
セントリーを3枚用意すれば突破されない……と口で言うのは簡単だが、そのプランはあまり現実的ではない。
ならば発想を変えよう。ようはセントリーと3回エンカウントさせればよいのだ。
《Mumbad City Grid》を使えばそれは可能だった。《Laamb》も《Engolo》もサブタイプを付与する効果はエンカウントの間だけ。エンカウントが終われば付与したサブタイプが消えるのがポイントだ。
最外殻(1枚目)の《Changeling》をランナーが突破したあと、次にエンカウントするのは2枚目のICEと位置が入れ替わった《Changeling》。これを突破したとしても次にエンカウントするのはやっぱり《Changeling》。3度目のセントリーとのエンカウントにランナーは文字通り手も足も出まい!
無事守りきって得点したのは《Priority Requisition》。得点用遠隔サーバーにインストールされていた大型バリアICEの《Bulwark》をレゾする。《Changeling》と場所を入れ替わったので今は最外殻にある。
ランナーはさらに《Engolo》をインストール。リグには《Laamb》と2枚の《Engolo》が並んでいる。もはや先ほどの作戦は通じない。
私の経験が、HQには計画書が溜まり始めたこの状況でこのまま悠長に新たなセントリーのICEがドローされるのを待つことは危険だと警報を鳴らしていた。リスクはあるが得点を進めなければならない。
計画書をインストールしてアドバンス。遠隔サーバーを守っているのは最外殻から順に《Bulwark》、《Changeling》そして非レゾ状態の《Surveyor》。《Mumbad City Grid》はなおも起動中だ。
この守りを突破する自信のあるランナーは計画書目掛けてランしてくる。《Laamb》にすれば《Bulwark》は《Wall of Static》と変わりないし、セントリーに2回エンカウントしても突破できるはずだと。
ランナーが《Bulwark》にエンカウントする直前、異変が起こった。《Bulwark》の強度が急激に上昇している。
――まさか、なぜ!?
サーバーにインストールされていた1枚のカードがレゾされたのだ。
《Corporate Troubleshooter》の効果によりコーポは12クレジットを支払い、《Bulwark》の強度は8から20に上昇した。《Laamb》で突破するには基礎強度2から強度を18上げ、サブルーチンをブレイクしなければならない!
強度20の《Bulwark》の突破に11クレジット。ランナーが使えるクレジットは25。《Mumbad City Grid》が機能してる状況でこのICEとのエンカウントはランナーを追い払うのに十分な絶望感を与えることができていた。
見たか! これがICEの力だ!! 《Archer》の出番は!?!?
再びサーバーを守り切って計画書を得点したものの、ゲームを終了するのに必要な得点に届いておらず、この後R&Dから計画書を盗まれて敗北。直前に得点する計画書を3点のものにしておけば勝っていたのでかなり悔しい負け方をした。
しかし、強力なICEでランナーを何度も唸らせることができたし、再録されて現在のStandardフォーマットでも使用可能な《Corporate Troubleshooter》の可能性を見出すことができたので、非常に満足度の高いゲームでもあった。
来週からは新カードを試すため再びStandardフォーマットに戻る。新カード楽しみ!