Diesel

ボードゲームを中心とした記事を書きます。

ネットランナー会レポート 22.03.04 『対アセットスパム戦線』

 コーポもランナーも互いにクレジット不足が懸念されたRAMフォーマットの今回のカードプール。ランナーに至ってはアイスブレイカーの品揃えも貧弱という過酷な環境。一体どのように克服したデッキを組んでくるのか。注目の2週目の開幕。

 

 コーポの戦略の中心となったのはアセットスパム資材/Assetを大量に並べる戦略からこう呼ばれる。大抵の資材はレゾコストよりトラッシュコストの方が高いので、ランナーにトラッシュさせるだけでその分クレジットに差ができる。その資材がクレジットを生むのなら放置してもやはりクレジット差が広がる。どちらを選んでもコーポの方がクレジットが多くなる理不尽な選択を迫るわけだ。

 今回アセットスパムが選ばれる理由はクレジットを稼ぐために《Mental Health Clinic》を並べなければならないことが大きな要因になっているように思う。任務/Operationでクレジットを稼ぎづらいのでこういった資材に頼らざるを得ない。

 《Tour Guide》もアセットスパムを誘因する大きな存在だ。資材がたくさんレゾされていればいるほど強くなるこのICEはこの環境において非常に輝ける存在になりえた。なんせアイスブレイカーの選択肢がイマイチすぎたからね。

f:id:NLR:20220310000108p:plain

 

 

 アセットスパムをどのIDで運用するかだが、カードプールの兼ね合いで選択肢はWeyland ConsortiumかJintekiの2つの派閥に絞られる。Weyland Consortiumなら《Gagarin Deep Space: Expanding the Horizon》で決まり!

f:id:NLR:20220311001143p:plain

遠隔サーバーアクセスに追加コスト。アセットスパムのために生まれてきた。

 

 実際どちらの派閥もうまく機能していた。Weyland Consortiumはカウントダウン後に4ミートダメージを飛ばす《Urban Renewal》を《Team Sponsorship》で繰り返し再インストールしてランナーをグリップ面でもクレジット面でもじり貧に追い込んでいく。クレジットが減ったランナーには《Hard-Hitting News》によるきついお仕置きが待っており、《Dedicated Response Team》が迂闊なランを許さない。

f:id:NLR:20220310234207p:plain

例えランナーを倒せなくてもReconstrucion Contractのアドバンスカウンターが稼げる。

 

 Jintekiは《Mushin No Shin》で《Reconstruction Contract》にアドバンスカウンターを貯めてファストアドバンスが狙えた。特に《Komainu》には注意が必要で、グリップのカードの枚数だけ「1ネットダメージを与える」サブルーチンを解決して手札がすっからかんになったあと《House of Knives》で追い打ちされるとそれだけでフラットラインしてしまう。

f:id:NLR:20220311154648p:plain

ランナーが一番で会いたくないタイプの番犬

 レゾされるまでどんなICEがそこにあるかわからないのがこのゲームの基本的なところ。どんなICEが飛び出すかドキドキするね。即死の恐れがある場合は特に。

f:id:NLR:20220310232211p:plain

どこにKomainuが潜んでいるかわからない間が一番怖い

 

 

 

 ランナーサイドはクレジット収入が比較的マシなAnarch、その中でも特にアセットスパムに強い《Valencia Estevez: The Angel of Cayambe》が人気だった。悪評/Bad Publicityは毎ラン自由に使えるクレジットを生むので《Gagarin Deep Space: Expanding the Horizon》みたいなIDの天敵である。私が選んだのは実は《Null: Whistleblower》だったんだけどね。

f:id:NLR:20220311001053p:plain

強い能力の代償にデッキ下限は50枚

 中央サーバーを攻めることに特化したCriminalと違い、《Gagarin Deep Space: Expanding the Horizon》のようなアセットスパム型のデッキと戦うことも意識しないといけないOrder and ChaosセットなだけあってAnarchにはそれができる武器がもともと多く用意されている。

 資材を多く積むためにICEの枚数が少なめになるアセットスパムはその分1つ1つのサーバーの守りは薄くなる――もしくは全くない。コンソールの《Maw》はこの状況下で最大限の力を発揮する。ICEで守られていない資材まみれなのでアクセスし放題だ。

f:id:NLR:20220311140846p:plain

アクセスしたカードを盗んだりトラッシュしなければコーポの手札1枚ランダムトラッシュ

 毎ターン1枚だけトラッシュされるというのは想像以上にきつい。あとで使おうと思っていた任務ならまだしも、隠し持っている計画書だってランナーすら知らないうちにトラッシュされることがある。

 これに対抗するためにHQのカードが0になるように常にカードをインストールし続けるようにプレイしてみたが、今思えばそんなに意味はなかったように思う。ただ計画書がランダムトラッシュに巻き込まれる前にICEの後ろにインストールする必要があった。

f:id:NLR:20220311141518p:plain

この状況だと50%の確率でHQから計画書がトラッシュされてしまう。ピンチ。

 

 ICEに対する解答も存在する。Standardフォーマットでは禁止になっていた凶悪なやつだ。

f:id:NLR:20220311142943p:plain

主にApocalypseとのコンボに使われる印象

 《DDoS》は最外殻*1のICEのレゾを封じ、その効果はターン終了まで継続する。ICEの数が少ないアセットスパムにとってICEのレゾ自体を禁止されるのと同義。《Maw》による攻撃に焦って守りの薄いサーバーで得点を急げば《DDoS》でかっさらい。《DDoS》を警戒してICEを待てばその間《Maw》の脅威に晒される。

 えげつないコンボだ。なぜ私はこのカードを採用しなかったのか……!

 

 

 最後にアイスブレイカーの話を。今回私がデッキに採用したのは《Yusuf》、《Study Guide》そして《Puffer》。

f:id:NLR:20220311154032p:plain

色物ばかりが揃った

 《Yusuf》は特殊だが性能は悪くないフラクター。というか対抗馬は《Breach》しかない状態。これとの二択なら迷わず《Yusuf》だった。《Ankusa》はコストがかかりすぎる。

 《Study Guide》は強くなるまでにかなりの投資が必要になるデコーダー。なんの対策もなしに運用するにはコストがかかり過ぎる気はするが、それでも中央サーバーでしか使えなかったり《Leviathan》のような過剰な力を運用するよりかはマシに思えた。仮想敵は《Turing》だったからだ。

 《Puffer》はクリックで基礎強度を増やせる唯一のアイスブレイカー。同時に使用メモリー量ももりもり増えていく。メモリー上限を無視できるカードの上にインストールできればそのパワーを遺憾なく発揮できるが残念ながらこのカードプールにそんなものはなかった。
 前回の記事でも書いたようにこのカードプールにキラーはCriminalにしかない。これと、中央サーバーでしか使えない《Alias》と、使い捨ての《Faerie》だ。《Faerie》の性能は非常に優秀なのだが、使い捨てである以上他にも用意が必要だが、そんな余分な影響値は残されていない。消去法で《Puffer》だけが残った。

 強度を上げるのに難のあるアイスブレイカーを採用することが《Null: Whistleblower》を選んだ理由だったりするわけだ。

 

 AIアイスブレイカーに良いものはなかったのか? 我々には《Darwin》と《Overmind》という2つの選択肢があった。しかしどちらも完全に頼るには致命的と言える弱点を抱えていた。今回のカードプールで最も警戒する必要のある《Tour Guide》と《Komainu》のようなサブルーチンをたくさん持つICEの相手が苦手すぎるということだ。

f:id:NLR:20220311160235p:plain

 ただ苦手だからといって全く役に立たないわけではない。対《Komainu》を相手にしたときそれを痛感した。十分な数のサブルーチンをブレイクできなくとも、少なくともその即死コンボからは逃れることができる。

 デッキに1枚だけの《Puffer》を引くか(引けなかったけど)、《I've Had Worse》を引いて即死を回避できるようになるまで未レゾのICEに挑めずロック状態となってしまっていたので、特にアイスブレイカーの数もサーチ手段も用意できない環境では中継ぎ手段を用意することを忘れないようにしておきたい。

 

 

次のカードプール

Large releases
- Core Set
- Data and Destiny

Small releases
- Fear and Loathing
- The Spaces Between
- Up and Over
- The Underway
- Old Hollywood
- Kala Ghoda
- Fear the Masses
- Intervention
- Daedalus Complex
- Council of the Crest
- Whispers in Nalubaale
- Kampala Ascendent

 

 Core Set参戦。初期の強いカードが飛び交う激しい応酬が予想される環境だ。

 Midnight Sun Booster PackがJinteki.netに実装されたらStandardもやりたいね。

 

 

diesel.hatenablog.jp

*1:サーバーの最も外側を守る位置