Diesel

ボードゲームを中心とした記事を書きます。

ネットランナー会レポート 22.02.11 『現状』

 新しい環境、新しい体験。いつだってワクワクする。

 RAMフォーマットは2週間ごとに新しい環境に更新される。デッキの寿命が短いのが玉に瑕だが、Standardを遊んでいた頃もほぼ毎週新しいデッキを用意してたからあんまり関係ないな!

 今回からまた新しいカードプールでゲームが始まる。特に今回含まれているData and Destiny大拡張はAdamSunnyそしてApexという少数派閥を含む楽しみにしていたセットの1つだ。――――とはいえそれらが活躍できるかどうかはまた別の話。カードプールをよーく眺めて戦えるかどうか見極めよう。もしくは愛の力で頑張るか……

……今回はApexの活躍は無理そうな気がするよ。

 

 

現状

 Data and DestinyはNBNの拡張でもある。NBNといえば情報を制する企業で、タグ付けやらグリップのピーピング*1やらが得意な派閥。情報と言えばアンドロイド世界のニュースを手掛けるのもこのグループなので現状の把握も得意。

 

……そう、アンドロイド:ネットランナーには現状/Currentというメカニズムが存在する。

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現状/Current

 プレイして効果を解決したらすぐさま捨てられる任務/Operationイベント/Eventと違って、現状のサブタイプを持つこれらは場に残って効果を発揮し続ける特殊なカード群。

 クレジットを細々と稼ぐような有利な効果もあれば、相手に不利な効果を押し付けるものまで様々あるが、共通して言えるのはどれもこれも相手を苦しめる結果をもたらすということ。それがコーポのサーバーにある資材強化であればランしてトラッシュコストを支払うことで破壊できるし、ランナーのリグにあるカードであれば――いくぶんか難しいが――タグやICEなどいろんなアプローチでトラッシュを試みることができる。

 → 現状/Currentの一覧

 

 しかし、現状は違う。現状がトラッシュされるのは新しく別の現状をプレイするか、コーポのカードならランナーが計画書を盗んだ時、ランナーのカードならコーポが計画書を得点した時のみ。

 相手に現状を発動されている状態というのは非常に不利な状態にもかかわらず、それを乗り越えて計画書を得点したり盗んだりというのは非常に難しいうえに狙ってできるようなものでもないので、相手の現状を対策したければ自分も現状を使うということになるし、実際そうなった。「相手に簡単に上書きされてしまうのだから効果は強くてもいい」みたいなデザインなのもそれに拍車をかけることになる。

 

 相手が採用しているかもしれない現状の対策のために自らも現状をデッキに入れる。入れてない方が一方的に不利を押し付けられ続けるこのメカニズムはデッキ構築時に毎回現状カード用のスロットを設けることを迫られ、現状が手札に来ないがゆえに負けるゲームが発生する。この状態は非常に不健全でプレイヤー達は不満を募らせていた。

 この状況を打破するにはどうすればいいか。特定の強すぎるカードを禁止するのか、そもそもメカニズム自体が諸悪の根源であるのか、NISEI内でも散々議論されたようだった。

 そしてStandard Ban List 20.06発表。FFGの時代から引き継いできた制限・禁止リストを廃止し一律禁止リストに移行したこのとき、全ての現状/Currentはそのリストに名を連ねることとなった。メンコと揶揄されたこのメカニズムはStandard環境において終焉を迎えることとなる。

nisei.net

 

 

悲劇のカード

 現状/CurrentがStandardから一掃されたのは非常に喜ばしいことだったが、同時に不幸なカードを生むことにもなる。

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 《New Angeles Sol: Your News》はまさに現状を使って戦うID。例え計画書が盗まれようとも現状を張り直すことができる非常にいやらしい能力を持つ。ランナーがこれを打開するには自ら現状をプレイして上書きする他ない。

 《News Hound》は現状がプレイされていれば追加のサブルーチンを得る。レゾコストの割に強度が高い傾向にあるトレーサー/Tracerが「ランの終了」まで持つとなるとその性能は破格。しかも現状はランナーのものでもよいので、この「ランの終了」はほぼ失われることはない。

 これら2つのカードはいずれも現状/Currentがあることによって真価を発揮する。しかし上で述べたようにStandardで現状は全て禁止されているので、《News Hound》はただタグを付けるトレースを仕掛けるだけのICEになり、《New Angeles Sol: Your News》はまさかのバニラ*2化という憂き目にあうことになった。これらのカードは未だStandardリーガルである。

 あまりにも可哀そう。。

 

 

 しかし!

 RAMフォーマットではプール内のカード全てがリーガル。現状のカードもそこそこあるし、この不幸なカード達を活躍させることができるのでは?? いやさせなくては!!!

――という使命感のもとデッキを用意してネットランナー会に臨んだのであった。

 

 

対戦

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ICEもクレジットソースもなし

 現状張りまくってその辛さ思い出させてやるぜ!!と意気込みつつ対戦を開始。手札に早速現状《Scarcity of Resources》があるぞとしめしめ……とは言ったもの、クレジットは稼げないし計画書は2枚あるしHQを守るICEもないという最悪の手札。これはマリガンするしかない……

 余談ではあるが《Scarcity of Resources》は個人的に最悪の現状カード。あまり良い思い出がない。

 

 マリガンした結果がこちら。

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まあ、まだなんとか……

 あまり変わり映えしないが、ICEが1枚確保できただけでも良しとしよう。。

 

 対戦よろしくお願いします!

 さっそく1ターン目の強制ドローしてと…… 

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 ぎゃあぁ! 計画書じゃないか!

 ドローして計画書が増えるはアンドロイド:ネットランナーあるあるだが、それにしても開始早々甚大な事故っぷり。

 

 だがまだ慌てる時間じゃない。幸い手札には《Spin Doctor》がある。こいつでわざとHQを溢れさせて計画書をアーカイブに捨て、あとでR&Dに戻せばよいのだ。

 1クリック目で《Spin Doctor》をインストールしてレゾ。レゾ時効果でカードを2枚ドローする。ドローされたのは《Tomorrow's Headline》と《Daily Quest》。

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……ってまた計画書かーい!!

 1ターン目から4枚の計画書をHQに抱える。まあ、《Spin Doctor》で2枚戻すからいいんだけど……

 HQがこのざまなのでICEはHQを守るのに使いたい。HQから計画書をなるべく減らしたいので7枚カードを持った状態でターンを終えて手札上限5枚になるように2枚捨てることにする。

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計画書を2枚捨てた

 相手のランナーは《Kabonesa Wu: Netspace Thrillseeker》。Shaper相手にR&Dを裸にするのはなかなかにリスキーだが攻められることはなかった。ラッキー。

 

 コーポ2ターン目。強制ドロー。

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……ってまた計画書じゃねーか!! デッキに9枚入ってる計画書のうち5枚が2ターン目に見えてるってどういうことだ!!

 溢れかえる計画書に若干パニックになりつつも落ち着くために素数を数える。

 2、3、5、7、11……

 まだゲームは始まったばかりでランナーはコーポがどういうスタイルで戦うかまだ知らない。ここは思い切って資材を大量に引きましたという体で乗り切ろうじゃないか。大量に遠隔サーバーを作ってその中に計画書を紛れ込ませるんだ。幸いにも《Seamless Launch》が1枚手札にあるしなんとかなるだろう……

 

 これは計画書じゃないヨー(;゚3゚)~♪

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アセットスパムを装う

 ランナーのターンで計画書がインストールされたサーバーにランされなければ得点できるが果たして……、とドキドキしていたらランナーはリグを整えてターンエンド。

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Shaperのスタートは時間がかかる

 なんとか計画書を得点。《Offworld Office》だったのでクレジットも手に入った。2枚目のICEを引けたのでひとまずピンチを脱したかもしれない。

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 コーポ5ターン目。

 防御に使えるICEを手に入れたので前のターンに《Daily Quest》を起動。これが起動しているうちはクレジットに困ることはそうそうない。

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 強制ドローは《Scarcity of Resources》だったのでそのままプレイ。ランナーのリソースのインストールコストは一律2ずつ増加する。

 ランナーを低速化させてこのままゴールまで突っ走りたいところだが、5ターン目にしてもまだランナーのリソースは出てきていない。……あれ?

 

 ランナーは7ターン目にしてリグに3種類のアイスブレイカーを揃え終えている。こうなればいかなるICEも突破されてしまうが、それもクレジットがあればの話。ランナーの財布が薄い今がチャンスだ。

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ICEを追加し計画書をインストールしてアドバンス

 《Remastered Edition》をインストールしてアドバンス。来るなら来い!

 

 

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 ランナー1クリック目から《Overclock》! クレジットがないと見せかけて実はたんまり持っていたパターンだ。だがこのまま通してなるものか!

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 《Ping》と同時にレゾしたのは《Keegan Lane》。

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 タグと一緒にトラッシュすることでプログラム1個トラッシュできるシスオペ/Sysopの強化。トラッシュするのはもちろんバリアである《Ping》を突破できるアイスブレイカー。

 《Gauss》よさらば!

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 ランは終了。計画書は守られた。

 今回のこの環境ではランナーはヒープからカードを回収する手段を欠くので、プログラムのトラッシュは相当な痛手のはず。2枚目の《Gauss》が出てくるまでに勝負を決めたい。

 

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 《Remastered Edition》を得点できた。アドバンスカウンターを1個だけ、クリックを使わずに置けるので《Seamless Launch》の代わりとしても使える。ラッシュあるのみ。どんどん計画書をインストールしてけ!

 

 

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GG!

 8点目を得点してゲーム終了。序盤に盛大な事故に見舞われたが勝つことができた。これも毎週のように相手してもらってプレイを重ねられているおかげか。

 計画書を盗まれることなくゲームを終えたので《New Angeles Sol: Your News》の強みを感じる間もなく終わった。もしかして《Ping》と《Keegan Lane》のコンボが強かっただけなのでは!?!?

 ゲーム終了時点でランナーがインストールしていたリソースは《The Turning Wheel》1枚。聞くに《Scarcity of Resources》を警戒してほとんどリソースを採用しなかったそうだ。デッキ構成で対策されている。

 なるほど、理にかなっている。私だってそうする。今回のランナーのデッキにはほとんどリソースを入れていない。

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……とまあこんな具合に現状というのはデッキ構築に大きな影響を与えてしまう。《Scarcity of Resources》みたいなカードがある環境であればリソースを活用して戦うのは非常に厳しく、対抗手段として更なる現状を投入するのが必然となってしまうわけだ。

 いろんなカードが輝くチャンスを得るこのRAMフォーマットだからこそ《New Angeles Sol: Your News》でも活躍するできるよう現状のカードが使えるようにあることが望ましくもあるし、このメカニズムはあらゆるフォーマットから即刻追放するべきだとも思わなくもない。

 うーむ、どうしようかな……。

 

 

diesel.hatenablog.jp

*1:覗き見

*2:何も能力がないこと