ネットランナー会レポート 22.01.28 『Spinの悪夢』
ランダムにカードプールが変化するRAMフォーマット2つ目のカードプールで対戦する日がやってきた。
カードの組み合わせ次第では、普段日の目を見ないカードでも天敵がいなくなってより輝くこともあれば、逆にかつて強すぎて禁止制限されていたようなカードもシナジーのある相棒を失って途端に元気を失うこともある。RAMフォーマットはいろんなカードに活躍の機会がある魅惑のフォーマットだ。
カードプールの抽選結果はこちら↓
今回のカードプールの抽選を終えてリストを眺めていたとき、とあるカードが活躍する下地が出来上がっていることに気が付いた。
これ使ったら滅茶苦茶強いデッキになるのでは……?
ランダムゆえに禁止制限のない(禁止されているセットはあるが)フォーマット。なんでもありなんだから、もしかしてこのカード使っちゃってもいいのでは……と、非常に悪いことをしている気持ちにはなったが、デッキを形にしたい欲求には逆らえなかった。
最悪の対話拒否カード
繰り返しになるがランダムなカードプールゆえ、派閥の偏りも当然生じる。ランナーであればShaperのカードが豊富で、AnarchのIDは《Reina Roja: Freedom Fighter》しかなかったが、AnarchであるというだけであえてこのIDを使うことにした。
Anarchは反体制の派閥。体制に対してNoを突き付けるため、時には企業の悪い噂を――真実かデマかは別として――流して立場を弱めようとすることもあり、それはカードのデザインにも表れている。今回のカードプールでは以下が使えた。
《Mining Accident》はStandard現役。コーポに選択肢があるものの、このゲームで5クレジット失うことは相当つらいことなので、将来の被害が大きくなるとわかっていても悪評/Bad Publicityを得ることを選びがち……と、実質悪評を与えるカードとして機能する。
《Tallie Perrault》はコーポが触法/Gray Opsもしくは違法/Black Opsの任務をプレイするたびに悪評を与えるリソース。このカードプールには意外と触法任務が含まれており、特に汎用クレジットソースである《Subliminal Messaging》が採用される見込みはかなり高いと睨んだ。十分発動機会もしくは抑止として働いてくれそうだ。
最後に《Frame Job》。この中で唯一コーポの意思を介さず悪評をつけられるカードではあるが、計画書を1つ放棄しなければならずかなりハードルが高い。0点計画書化する《Fan Site》も使える環境であるが……
――と、悪評をつけられるカードに恵まれていて現実的に機能しそうな様子。舞台は整った。
ICEで守られたサーバーにカードがインストールされ、アドバンスカウンターが重ねられる。
ランナーのリグはほぼ空。まだこのICEを突破できまい。そう踏んだコーポの強気の得点行動だ。
ランナーは不敵に嗤うとグリップから1枚のカードをプレイし宣言する。
「遠隔サーバーにラン」
ランイベントによりサーバーへのランが開始される。
コーポのクレジットは十分。ランナーのランはICEによって阻まれる――かに思われたが何やら様子がおかしい。ICEは沈黙を保ったまま、まるでそこに何もないかのように、ランナーはサーバーの内部に到達する。
《Blackmail》は中立のランイベント。その効果は超強力の一言で、このランの間コーポはICEをレゾできない。
ラン中にICEのレゾを阻害する効能を持ったカードは数あれど(《Reina Roja: Freedom Fighter》もその1つ)、ラン中にあらゆるICEのレゾを妨害どころか禁止する効果を持つのはこれくらいなもの。例えコーポが何枚ものICEでサーバーを守ろうと、いくらクレジットを持っていようと、ランに備えたコーポの努力は全て無駄に終わる。
レゾできないICEはただの紙切れ。
悪評を受け取ったが最後、このゲームの主なインタラクション部分であるICEを通したやりとりをさせない無慈悲なランが計画書を掠め取っていくのを見守ることになる。
悪評を与えてゲームを開始するIDがこれを我が物顔で振り回してた時代があったなんてとても恐ろしいことだと思う。
一応、会社の評判を回復することに定評のある《Elizabeth Mills》と、社員に腹を切らせて世間に詫びる《Restoring Face》があるので対抗策がないわけではなかったのだが、《Blackmail》だけを警戒するために採用するかどうかは非常に悩ましいところではある……。
Eternalでも禁止なコンボ
アンドロイド:ネットランナー界の魔境Eternalフォーマット。なんでもありすぎて我々には耐えられなかったあの環境ですら、ゲームバランスのために禁止されているカードがある。それがこの《Accelerated Diagnostics》だ。
《Accelerated Diagnostics》はR&Dのトップ3枚を見てその中に含まれる任務/Operationを好きな順にプレイできるというカード。3枚とも任務であれば1クリックで3回任務をプレイできることになる。この効果は同じHaas-Bioroidの《Accelerated Beta Test》とよく似ている。ちなみにデッキトップを見たら並べ替えるのがJinteki流。
R&Dのカードの並びはコーポにとっても非公開情報なので、ただただ使うだけでは運よく任務があることを祈るだけの効果にしかならないわけだが、R&Dの中身を操作できるなら話は別。
《Power Shutdown》。本来はR&Dを削ることをコストにランナーにプログラムかハードウェアのトラッシュを強要するカードであるが、R&Dを削る枚数を自由に決められることを利用すればこんなこともできる。
まずは《Power Shutdown》を発動。XにR&Dの残り枚数を指定する。するとR&Dのカードは全てトラッシュされArchivesに移動し、R&Dは空になる。
この状態を作ったら《Jackson Howard》の効果を使い、Archivesにある好きなカード3枚をR&Dに戻す。任務を3枚選んで戻しておいて、あとは《Accelerated Diagnostics》を使えば――
――無慈悲な《Punitive Counterstrike》3連打を食らわせることも可能だ。このコンボは2クリックあれば実行できるので、1クリック目で《Punitive Counterstrike》をプレイすれば4連打も夢ではない。なんとまあ無茶苦茶な。
《Accelerated Diagnostics》の更にすごいところは、任務のプレイに必要な追加コストを無視できるということ。見たカードがダブル/Doubleやトリプル/Touripleの任務であってもお構いなし。1クリックで3クリック分の任務分の仕事(1任務につき大体3~4クリック分の仕事)をするだけでも十分すごいのに、その効率たるや底なしといったところか。
これを利用してかつては《BOOM!》を連打して14ミートダメージ!!などしていたようだが、今回のカードプールではArchivesに落とした計画書を《Interns》でインストールし、《Red Planet Couriers》で大量のアドバンスカウンターを載せるというコンボに利用した。
事前にアドバンスカウンターを他のカードに置いておく必要があるが、《SSO Industries: Fueling Innovation》のID効果と表向きにインストールする公共/Publicな計画書を利用することで手間なくその問題をクリアした。
HQに《Accelerated Diagnostics》と《Power Shutdown》、そして《Jackson Howard》のインストールを済ませておけば成立する、僅か2クリックで計画書を得点するコンボ。何もないところから突然アドバンス要求を満たした《Vanity Project》が現れるんだから、如何に《Accelerated Diagnostics》が危険なカードか伝わったことだろう。
3つの派閥を使うこのコンボだが、どのカードも影響値は1とどの派閥で使っても苦しくないようになっている。いずれのカードもSpinサイクルに存在するカードで、《Accelerated Diagnostics》と《Power Shutdown》に至っては同じデータパックに収録されている。もはやデザイナーズコンボなのでは。
コーポもランナーもとんでもないカードが含まれているSpinサイクル。
私がアンドロイド:ネットランナーを始めた頃にはもうローテーションしており触る機会がなかったが、こんなにもパワフルだとは予想だにしなかった。
Spinサイクル怖い。来週はどうなる……!?