Diesel

ボードゲームを中心とした記事を書きます。

ネットランナー会レポート 21.09.03

最近は毎週土曜の夜21時(JST, GMT+9)に開催されるKeyForgeの小規模なオンライン大会に参加している。主催はフィリピンでカードショップの店長をやっていた方なのだが、KeyForgeの公式大会に出るほど意欲的なだけあってとても強い。
フィリピンの言語(具体的にどれなのかは私には判別できない)と英語とごくまれに日本語が入り混じるDiscordサーバーでワイワイと対戦を楽しませてもらっている。コロナ禍ですっかりKeyForgeのプレイ機会を失っていた私にとってとてもありがたいお誘いである。

KeyForgeをオンラインで対戦するためのサイトthecrucible.onlineについてはまた別の記事で詳しく説明しよう。

KeyForge自体についてはこちらの記事で紹介している。どんなものかを知りたい場合はぜひご一読を。

diesel.hatenablog.jp

 

 

 

さて、今回の対戦の1つを振り返っていこう。

Acme vs Zahya

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1試合目はNBN《Acme Consulting: The Truth You Need》とCriminal《Zahya Sadeghi: Versatile Smuggler》の対戦。

AcmeのID能力は最外殻*1のICEにエンカウント中ランナーが追加のタグを持っているとみなすというもの。
ランナーに付いた実際タグが0であってもこの間はタグされている状態となるため、タグとシナジーのあるICEと組み合わせると強い。特に《Data Ward》はレゾコストたったの6で強度8、ラブルーチン4つでランナーを阻む強固なバリアとなる。おまけにエンカウント時能力付き。

 

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そのID能力故どのICEも最外殻であってほしい……という運用をすると薄く平たくサーバーを守ることになる。

 

試合序盤、コーポ側はうまくICEが揃わずちぐはぐな防御態勢でランナーを迎撃。
ランナーは《Security Testing》で隙だらけのサーバーの脆弱性チェックで小遣いを稼ぎつつこちらの資材を丁寧に破壊してくる。かなり厳しい状況だ。

 

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そうこうするうちにようやくICEを引き、守りを固めるコーポ。もたもたしている間にランナーがリグを整えてしまう。しかし幸いなことにフラクター*2は未だ見当たらず、一方コーポのサーバーを守っているのはバリアICEが中心だ。

今がチャンス。

 

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《Inside Job》を警戒しつつ、うまく隠して《Seamless Launch》で得点を重ねていく。

 

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ぎりぎりの資金繰りであるが、2枚目の《Cyberdex Sandbox》を得点したことで8クレジットを入手。得点5対2でランナーを追い詰めた。
HQには計画書《Bellona》とそれを守るために使える《Data Ward》が。
そしてServer8には、ランナーを絶望に叩き落すためのカードが既にインストールされている。

 

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2クレジット払ってHQのカード2枚捨てることでランを終了できる強化

 

舞台は整った。あとはランナーのクレジットが減ったタイミングを狙って得点を仕掛けるだけ。この勝負もろたで!!

 

 

 

 

…とか思っている間に《Paperclip》がインストールされて守りを突破され――

 

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――《Anoetic Void》をトラッシュされてしまった。これでは《Bellona》を安全に得点できない。
最後1枚得点すれば勝てるのに、最後の1枚が遠い。

 

幸いにもドローを重ねることで2枚目の《Anoetic Void》を引き当てた。
得点サーバー*3にインストール!
《Data Ward》で守りを固めたので今度はそう簡単にトラッシュされないはずだ。

 

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ドローを重ねているのは、HQにあるとバレている計画書にアクセスされる可能性を下げるためと、《Anoetic Void》発動のための燃料補給を兼ねている。

 

そして迎えた次のターン。
Server8には前のターンにインストールした《Anoetic Void》、そして《IP Block》とまだレゾされていない《Data Ward》がそこを守っている。

ランナーがこのサーバーを1回突破するのに《Paperclip》を使用して10クレジット必要。《Anoetic Void》で1回ランを終了させられるので、倍の20クレジットが必要だ。
更に《Bellona》を盗むためのコストに5クレジット必要で――

 

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――それでもってランナーの所持クレジットは6でターン開始の収入ともろもろで使えるのはええと……、細かいことは置いておいて全然足りなそうに見える。

 

 

 

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勝利をほぼ確信したインストール、アドバンス、アドバンス。
ランナーは4クリックのうち2クリックをランに使い、ついでに12クレジットを稼がなければならない。(あとで計算した)
よっぽど条件が揃っていなければ不可能だ。

 

ランナーのターン。
1クリック目、ドロー。2クリック目、ドロー。3クリック目でServer8にラン。
食いついた!

 

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無情にも立ち塞がる高い壁。
当然攻略するためのクレジットが足りないので《Anoetic Void》を起動するまでもなくランナーは門前払い。

さあどうする。

 

 

ラストクリック。繰り出されたのはなんと《The Maker's Eye》

 

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遠隔サーバーが突破できない状況で最後の望みをかけたR&Dへのマルチアクセスが試みられる。

ランナーの得点は2。勝つには最低でも1枚の《Bellona》とそれ以外の計画書を同時に盗む必要がある。

 

少しでもランナーのクレジットを削るべくICEをレゾするも、ランナーにはこれらを突破してなお《Bellona》を盗む余力は残されていた。

 

 

 

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なん……だと……

 

勝利を確信していたコーポに突然突き付けられる敗北の文字。ついBLEACHの慣用句を口走ってしまうほどの想定外。

計画書は完璧に守れるはずだった。R&Dを攻められても、せいぜい1枚盗むのが関の山だと。

 

この敗北はR&Dから5点分盗めるわけがないという慢心が生んだ結果だ。
もし遠隔サーバー攻略を諦めるような絶望をランナーに叩きつけなければ、――例えば3クリック目のランで《Data Ward》をレゾせず、ランナーが十分なクレジットを残したまま2回目のランに挑めるように見せかけ、そしてコーポに得点に必要なクレジットが残ってないように誤解させれば――遠隔サーバーへのランを誘導できたかもしれない。

このゲームにおけるブラフというのは、単にインストールしたカードが計画書かそれ以外をあてるだけではない。もっとハイレベルな心理戦をするためにはまだまだ練習が必要だ。

 

諦めず勝ち筋を選び、見事土壇場で勝利を掴んだハルミさんに賞賛の拍手を。

 

 

 

他にもタグミーしたランナーが2ターン連続で《BOOM!》されるようなおもしろい試合があったが、全てを書き切ることはできないのでここまで。

それではまた次回。
記事にも書いたが参加者や見学者は大歓迎だ。

diesel.hatenablog.jp

*1:最も外側。サーバーから遠い位置。

*2:バリアICEを突破できるアイスブレイカ

*3:スコアリングサーバー、得点するために作った遠隔サーバーのこと