Diesel

ボードゲームを中心とした記事を書きます。

唯一無二のカードゲーム、KeyForge

2人でサクッと遊べるゲームを探している、
カードゲームを遊ぶのが好きだけどデッキ構築に疲れている、
もしくはガーフィールド先生の新作ゲームに興味のあるそこのあなたにお勧め!

唯一無二のカードゲームKeyForgeを今回は紹介したい。

Keyforge: Interview with Richard Garfield - MaltaComics

 

どんなゲーム?

KeyForgeは2018年にFantasy Flight Gamesからリリースされた2人用のカードゲーム。
デザイナーはかの有名なリチャード・ガーフィールド。私の大好きなボードゲーム『アンドロイド:ネットランナー』のデザイナーにしてMagic the Gatheringの生みの親である。

ゲームの目的はタイトルの通りキー(Key)をフォージ(Forge:鍛造)することである。
KeyForgeの世界Crucibleに隠された金庫を開くためのキーをいち早く用意し、お宝?を手に入れるのだ。
キーをフォージするためにはÆmberが必要で、6個集めることでフォージする準備が整う。しかし気をつけなければならない。同じ目的を持った敵は常にあなたのÆmberを狙っている。
Æmberを守り切り、キーを3つ先にフォージできたプレイヤーが勝者となる。

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Æmber6個でKey1つをForgeできる。

Crucibleにはいくつかのハウス(派閥)が存在している。
ロボットや科学者の集団であるLogos
聖なる騎士の集団Sanctum
大自然を味方につけた魔女や巨大生物の集団Untamed
火を使いこなす巨人やゴブリンの集団Brobnar
火星からやってきたのか!? エイリアンの集団Mars

…などなど、それぞれ見た目や能力にそれぞれ特徴を持っている。

KeyForgeのデッキはこれらのうち3種類のハウス(派閥)のカードがそれぞれ12枚ずつ含まれた36枚で構成される。

Outpost is looking for Keyforge Ambassadors

 

KeyForgeのターンは以下のように進む。

  1. キーのフォージ
  2. ハウス(派閥)の選択
  3. プレイヤーアクション
  4. カードのレディ
  5. ドロー
  6. ターンプレイヤーの交代

1.キーのフォージ

手番が来たプレイヤーはまずキーがフォージできるかチェックする。
自分の所持Æmberが6個以上であれば、6個を消費してキーを1つフォージする。
このときフォージできるキーは1つだけで、余っているÆmberが例え6個以上でも持ち越される。

2.ハウスの選択

次に、自分のデッキに含まれる派閥のどれかを宣言する。
これが意味するところは次のプレイヤーアクションで説明しよう。

3.プレイヤーアクション

このフェイズではターンプレイヤーは満足するまで次の行動のいずれかを実行することを好きなだけ行える。

  • 手札のカードのプレイ
  • 手札のカードを捨てる
  • 場に出ているカードの使用

手札のカードのプレイ

手札のカードのプレイは文字通り手札からカードをプレイすることだ。
このゲームにプレイコストの概念はないので、手札にあるカードを好きなだけプレイできる。
それがクリーチャーやアーティファクトであれば疲弊状態(Exhaust。いわゆるタップイン)で場に残り、アクションカードであれば効果を解決して捨てられる。

カードの中にはボーナスアイコンを持つものがあり、カードをプレイする際にはまずそのアイコンを解決する。
Æmberアイコンであればその数だけÆmberをゲットできるぞ。やったぜ!

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ボーナスアイコンはカード左上に付いている。最近種類が増えた。

 

 手札のカードを捨てる

手札のカードをプレイせずに捨て山に捨てることもできる。
後述するドローでは上限(6枚)まで手札を補充できるため、使わないカードは握っておくくらいなら捨ててしまった方がたくさんドローできるのだ。

 

場に出ているカードの使用

場に出ているレディ状態のカードは、使用(use)することができる。
使用されたカードは疲弊状態になり、基本的に1ターンに1回しか使用できない。
プレイされたカードは疲弊状態で場に出てくるため、使用できるのは次のターンからだ。

クリーチャーであれば敵クリーチャーを攻撃(fight)して戦力を削ぐことができる。一方、このゲームでは他のTCGでよくあるプレイヤーに対する直接攻撃は存在しない。最初に述べた通り誰よりも早くキーをフォージすることが目的であり、相手プレイヤーをやっつける必要はないのだ。

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クリーチャーカードの例

クリーチャーの使用方法はまだある。
クリーチャーに収穫(reap)を命じれば、なんとÆmberを入手できる。そう、クリーチャーは相手クリーチャーを殴る以外に、Æmberを生産する手段にもなるのだ。
クリーチャーを沢山並べておけば1ターンでフォージに必要なÆmberを手に入れることも不可能ではない。

 

プレイヤーアクションの内容を大雑把に説明した。
が、このゲームの特徴的なルールをまだ説明していない。

カードのプレイ、捨てる、そして使用するといったこれらのアクションは全て、選んだハウスに属するカードでのみ行うことができる。

 

例えば「Untamed(アンテイムド)」を宣言したとしよう。

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Untamedのクリーチャー例。ちなみにハウスはアイコンと色で判別する。

そのターン中はUntamedのカードだけがプレイ可能になる。プレイコストという概念はないので、手札にUntamedのカードがあればそれらは全てプレイ可能だ。逆にUntamed以外の派閥のカードはプレイできなくなる。

場に出ているクリーチャーなどのカードを使用することも例外ではない。宣言したハウスであるUntamedに属するクリーチャーであれば行動できるが、Untamedでないクリーチャーは攻撃も収穫もできないのだ。

 

4.カードのレディ

疲弊状態の自分のカードを全てレディ状態にする。
このゲームではMagic the GatheringDuel Mastersのように手番開始時にアンタップせず、ターンの終わりに行う。
レディ状態のまま次の自分のターンを迎えれば使えるのだ。相手の妨害がなければ。(そしてもちろんそのカードの所属するハウスを宣言すれば)

 

5.ドロー

カードゲーマーならみんなこの瞬間が大好きだ。
KeyForgeでは手札の補充上限(6枚)になるまで山札から手札にカードを補充する。1枚しか消費していなければ1枚ドローするだけだが、3枚消費していれば3ドロー、5枚消費していれば5ドローと、手札の消耗を気にせずカードを使えば使っただけ補充できるのがこのゲームの良いところだ。 
山札が切れたら捨て山をシャッフルして山札を再構築するので、デッキ切れによる負けのルールは存在しない。思う存分カードを引こう。

ちなみに補充上限は存在するが手札の上限自体は存在しない。このタイミングで手札が補充上限以上ならドローはできないが、手札を捨てる必要もないし、捨てることもできない。

 

6.ターンプレイヤーの交代

これであなたのターンは終わり。
もしあなたがÆmberを6個以上所持しているなら高らかに「チェック!」を宣言しよう。次のあなたのターンにキーをフォージしますよと相手にアナウンスするのだ。
宣言し忘れたからと言ってペナルティはないが、マナーとして宣言するようにしよう。

 

これらを繰り返し、Æmberを稼いでキーのフォージを狙っていく。
カードの中には相手のÆmberを盗むこと(Steal)ができるカードや、敵クリーチャーが一時的に奪い取っていくキャプチャー(Capture)といった要素があり、次の相手のターン開始までに相手の所持Æmberを6個未満にしてフォージを妨害したりもできる。

がっぽりÆmberを稼いだら、次の自分のターンまで抱えたÆmberを奪われないように祈ろう。

細かい内容については公式のリファレンスを読んでほしい。 

 

唯一のデッキ

 

このゲームを語るうえで外せない点がもう1つある。
なんと、同じデッキは世界に1つと存在しないのだ。

 

デッキごとに違った内容を印刷する技術とAIによってもたらされる無数のバランス調整済みのデッキ構築。これらの2つがなせる技術が確立されたことによって、KeyForgeは実現した。

プレイヤーはこれらのカードをデッキ単位で購入できる。デッキの中身は箱を開けてみるまでわからない。デッキにはそれぞれユニークな名前が与えられ、そのデッキに入っているカードはそのデッキ専用のカードとなっている。カードの裏面もデッキごとに違う念の入れよう。

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デッキごとにカード裏が異なる。他のデッキには使いまわせない。


なのでこのカードゲームにデッキ構築という要素は存在しない。

インターネットの発達により、強いデッキのレシピはすぐに広まり、誰もが勝てるデッキを作ろうと同じようなカードを買い集めてデッキに詰め込む時代。
パックによるカードのランダム封入によるデッキおよびプレイ体験の多様性を維持するには限界がきており、強いデッキを組もうと皆が同じデッキレシピを眺めている。

そんな中、「誰かが作ったデッキをみんなで使う」のではなく与えられたデッキをどのように使うのか悩んでほしい、デッキ構築に執着せずゲームで遊ぶこと自体を楽しんで欲しい、というガーフィールド氏の願いによってこのゲームはデザインされている。

 

全てのデッキがユニークである(同一のものが存在しない)ことによって、常に新しいプレイ経験が約束されている。そしてデッキを用意するには新しくパックを剥くだけでよい。
この常に選択肢に富んだゲームシステムとデッキのユニーク性によってプレイ経験の多様性は担保されており、デッキ構築ができないことを嘆くのは野暮というものである。
デッキ構築できなくてもこのゲームは最高におもしろいのだ。

 

KeyForgeのデッキは1つ$10ほどで購入できる。

新しいプレイ経験、してみませんか?