ネットランナー会レポート 21.08.27
タグ
アンドロイド:ネットランナーに存在する「タグ」という要素。
ルールではどのような状態にあるのか詳しく説明されていないが、「タグされた」ランナーがどのような末路を辿るかを知る機会は多々あるので、自然とどんな状態にあるのか想像することができる。
例えば口座を特定されたあげく凍結されてクレジット残高が0になったり――
隠れ家を特定されて建物ごと吹き飛ばされたり――
車が突っ込んできたりミサイルが飛んできたり隕石が降ってきたり――
――とまあ、タグが付いたままであるとコーポからとんでもない仕打ちをされるのである。NBNは社会的に殺しにくる一方で、怖いお兄さんをたくさん擁するWeylandは物理的に殺しに来る。狙われると命がいくつあっても足りゃしない。
コーポはこれら怖いカードを使うまでもなく、ゲームのルールとして、タグされているランナーのリソースをトラッシュできる。要はランナーにとってタグされているというのは非常に好ましくない状況であり、いつ敗北に直結するような仕打ちを受けてもおかしくない危険と隣り合わせな状態にあるわけだ。
ところが、あえてその危険を冒してまでもタグを受けることに利益を見出し、自ら望んでタグを受ける戦法を取るランナーも存在する。
タグミー(Tag me)と呼ばれるその酔狂な戦術の例を紹介しよう。
Counter Surveillance/逆監視 ワンショット型
タグを利益に還元する方法はいくつかあるが、その中で特にインパクトが強いのが《Counter Surveillance》を使ったマルチアクセス*1だろう。
タグと同数だけ追加のクレジットが必要になる代わりに、タグと同数枚のカードにアクセスできる。
タグが10あれば10枚アクセス、20あれば20枚アクセスと、これを使えばR&Dのてっぺんから底まで全部アクセスすることも不可能ではない。さすがにそこまでするのはオーバーだが、タグを十分に貯めてR&Dにランすればそれだけでほぼ勝利確定なほど大量の計画書を盗むことが十分期待できるだろう。
《Counter Surveillance》を使用するためには、その準備として大量のタグを貯める手段と、それまで殺されずに生き延びる手段がそれぞれ必要だ。もちろんクレジットも。
タグを貯める
Standard Ban List 21.06環境下で効率よくタグを貯めようと思えばこのカードが選択肢に入ってくる。
《God of War》はウィルスカウンターでサブルーチンをブレークできるAIアイスブレイカーで、ランナーのターン開始時にタグを受けることで自動でウィルスカウンターを得る能力を持っている。インストールしておくだけで勝手にタグを貯められるうえ、2枚目3枚目とインストールしておけばあっという間に10、20のタグを得られるだろう。
AIアイスブレイカーなのでいざというときは溜まったウィルスカウンターでどんなICEも突破することができる。
ただし基礎強度が0なうえ強度を1上げるのに2クレジットもかかるので過信は厳禁……。
ICEを突破する手段は他に用意しておこう。
タグを貯めるならコーポに何かされるまえに一気に決着をつけてしまいたい。コーポがどんなカードをデッキに入れているかわからない状態であるなら、ゲームが長引けば長引くほど危険だからだ。
他の手段を併用すれば当然それだけ早くタグを貯められる。ランナー(主にCriminal)のいくつかのカードには強い効果の代わりにタグを受けるものが存在するのでそれを利用しよう。タグを受けるというのは通常であればデメリットとして働くが、タグミーするならその代償すらメリットとなるのだ。
《Rogue Trading》は2クリックで6クレジットという高効率でクレジットを稼ぐことができる優秀なリソースに早変わり。リソースをタグが付いたまま運用するのはリスクが高いが、その点このカードは元手が0ですぐにトラッシュされてもほぼ損失がない。タグされた状態で使うのにうってつけというわけだ。
生き延びる
タグされた状態でプレイを続けるうえで気を付けなければならないのが唐突なミートダメージによるフラットライン*2だ。特にタグ2つあれば即死級のダメージを飛ばせる《BOOM!》はタグ付けからフラットラインを狙うデッキでよく採用されている。そのため最低でも7ミートダメージ受けても生き延びられるように備える必要があるのだ。
ミートダメージ対策といえばまず思い浮かべるのが《Citadel Sanctuary》と《Guru Davinder》。どちらも代表的なダメージ対策カードで突発的な大ダメージからランナーを保護してくれる。これさえ採用していればコーポはお手上げ!…と言いたいところだが、残念ながらどちらもリソースであるためコーポは容易にこれらをトラッシュできてしまう。
どちらも優秀なカードであることは間違いないのだが、タグミーのお守りとしては頼りないと言わざるを得ない。守る手段があれば別だが……。
同じくリソースであるものの《Jarogniew Mercs》は上2つの弱点をある程度克服したカードだ。タグの数+3のミートダメージを妨害できるうえ、インストール時にタグを1個増やせるオマケつき。それに加えて他にインストールされているリソースがあればコーポにトラッシュされない自己防衛能力も持っている。他のインストールコスト0のリソースで周りを固めてやればおいそれと手出しできなくなるだろう。
実践
上記の戦略を使うデッキの対戦の様子をご覧いただこう。
《Counter Surveillance》を使うためにタグを貯めたいランナー。《God of War》を2枚インストールしてタグを量産する構えだ。
IDは手札が少ないとクレジットを得られる《Nathaniel "Gnat" Hall: One-of-a-Kind》。《Guinea Pig》で余分なカードをトラッシュしつつクレジットを稼ぐコンボを狙いつつ、手札の少ない状態をコーポに狙われないように防御を固めている。
先ほど紹介した《Jarogniew Mercs》の他に《Heartbeat》を採用しているのは、ハードウェアなのでトラッシュされづらく、 《Jarogniew Mercs》では対処できないネットダメージとブレインダメージにも対応できるからだ。
この後順調にタグとクレジットを稼いでいくランナー。
途中《Clearinghouse》による攻撃を受けるも――
――《Jarogniew Mercs》で難なく耐える。
更に《Ronin》によるネットダメージ! このコーポなかなかアグレッシブにダメージを飛ばしてくる。
しかし――
――《Heartbeat》で《Harbinger》をトラッシュしてカバー。ミートもネットもダメージは1発も通ることまかりならぬ。まさに鉄壁。
そうこうしているうちに待ちに待った《Counter Surveillance》がついにグリップにIN。
タグもクレジットも準備万端。R&Dの守りも薄い。これはチャンスだ!
突撃!!
Server3に3アドバンスされた怪しげな何かがあるがこの際知ったことではない。
このランで勝てばよいのだ。
出迎えるはコードゲート《Aiki》。
ここはあえてサブルーチンをブレイクせずに通過を試みる。2/3の確率でPsiゲーム*3で2ドローできる可能性があるうえ、ダメージ対策は完璧だからね。
ICEを突破。さて、お楽しみタイムだ。
怒涛のアクセスだったが残念ながら盗めたのは2点の《Jumon》1枚のみ。《Obokata Protocol》にもアクセスできたが4ネットダメージを受けるコストが払えないので未遂に終わる。
う~ん、憎たらしい計画書だ。。
残念ながら勝利に必要なだけの計画書にアクセスできなかった。
幸いなことにさっきのドローで2枚目の《Counter Surveillance》を引くことができたので、次のターンにでも再び攻撃を仕掛けることができる。しかしR&Dのトップ17枚のうち計画書は先ほど盗めなかった《Obokata Protocol》1枚しかない。次の大量アクセスで《Obokata Protocol》とそれ以外の計画書をもう1枚盗みたいのでR&Dが削れるのを待ちたいところ。
返しのターンでコーポは《Jumon》を得点。さらに次のターンには何かをインストールして《Jumon》の効果で2アドバンスして次のターンにも勝ちそうな布陣。
《Jumon》によるアドバンスラッシュが始まってしまったのであとはスピード勝負。
1ターンの猶予しかなかったがR&Dの残り枚数は26、ランナーのタグは5増えて23。
幸いにも火力は十分ある。今なら根こそぎ計画書を盗みだせるだろう。
2枚目の《Counter Surveillance》を使う時だ!
2クリック使ってドローし、《Obokata Protocol》を盗む準備を整え、3クリック目で《Counter Surveillance》をインストール。
ラストクリックで能力を起動! いっけえええ!!
最後に盗んだ《Jumon》の次は3ネットダメージとタグを与えることでお馴染みの《Snare!》だった。もし7点取るまでに3枚の《Snare!》を踏み抜いていたらさすがに耐えられなかっただろう。マルチアクセスするときはこういった待ち伏せ系カードにも多くアクセスしうることを留意しておきたい。
なにはともあれ無事7点目をゲットして勝利だ!
と、実はここまでは先週の内容。
今週はこのデッキの弱点を克服したバージョンを作成して対戦に臨んだ。
Obelus/オベラス 手札物量型
新しいデッキでは《Heartbeat》の代わりに《Obelus》を採用した。このコンソールにはどんなダメージも妨害するような機能は備わっていないが、代わりにタグの数だけグリップ上限が増える。最大体力を増やすことによってフラットライン対策ができるというわけだ。
手札が増えればどのカードを使うかという選択肢も増える。R&DかHQへのランに成功すればアクセスした枚数と同じだけドローできるおまけつき。能力が自己完結しててとても強い。
実践
前回と同じく《God of War》を使ってタグを増やしていく。
先ほども述べたが《Obelus》自体にはダメージを妨害する能力はない。いつダメージを受けても大丈夫なように手札の枚数をキープする必要がある。
コーポは素早く3点計画書《Send a Message》を得点し、その効果でR&Dを守っていたICEを無料レゾ。
レゾされたのは強度6の《DNA Tracker》。《God of War》で対抗するには強度を合わせるだけで12クレジットも必要だ。ブレイクせずに通過した方が安い。
タグミーからの《Counter Surveillance》は当然警戒される。
よりにもよって《DNA Tracker》とは…。R&D攻略に大量のクレジットが必要になってしまった……。
ランナーが狙う場所がわかっていればそこを重点的に守ればよい。戦略がバレやすいデッキの弱点として受け止めよう。
コーポが《Saraswati Mnemonics: Endless Exploration》のID効果でカードをインストールして2アドバンス。
これ以上点差を広げたくないので迷わず特攻。迎え撃つはバリア《Data Loop》。
このICEはなかなか曲者でNBNのカードでありつつJintekiと相性が良い。《Data Loop》とエンカウントすると、ランナーはグリップ2枚をスタック*4に戻さなければならない。不意にグリップが減ることによって耐えられたはずのダメージに耐えられなくなる可能性が出てくる。盗むのに4ネットダメージを受ける必要がある《Obokata Protocol》を守るのにも最適なカードだ。
残念ながらアクセスしたのは待ち伏せ資材《Gene Splicer》。計画書ではなかったがコーポの得点源にもなるカードなのでクレジットを払ってトラッシュ。
同じサーバーにインストールされていた《Ben Musashi》は《Freedom Khumalo: Crypto-Anarchist》のID効果でトラッシュした。
ウィルスカウンターさえあれば計画書を除くカード何でもをトラッシュできるこの能力、《God of War》のウィルスカウンターを余らせがちなこのデッキにぴったりである。
高額な《Data Loop》をレゾしたことによってコーポのクレジットが底をついたので、《Docklands Pass》をインストールしてここぞとばかりにHQを攻め立てる。
《Docklands Pass》によってHQで2枚アクセス。《Obelus》でのドローも2枚。
このランによってコーポがHQに《Obokata Protocol》を抱えていることが発覚した。手札を補充して再チャレンジしよう。
次のランナーのターン。
《I've Had Worse》を2枚使って豪快にドロー。
グリップがこれだけあれば《Obokata Protocol》も恐るるに足らず。
いざ尋常に勝負!
HQ を守っていたのはまたもや《Data Loop》。手札からカード2枚没収されるも、この圧倒的グリップ枚数の前にはもはや焼け石に水と言わざるを得ない。
ラッキーなことに《Obokata Protocol》を含む3点計画書2枚にアクセス。
グリップから合計6枚のカードが消えたが、《Obelus》によるドローで6枚に回復した。
本来ならHQを攻め続ければ《Data Loop》によって毎回グリップを2枚削られることになり、グリップの補充のためにクリックを割くことになっていただろう。グリップの枚数を維持し続けられたのは《Obelus》のおかげだ。
息切れすることなく攻め続けられたおかげでHQからもう1枚の《Obokata Protocol》を盗んでゲームエンド。GG!
おわりに
ランナーにとって忌避すべきタグ。本来ならマイナス要素であるものを利用する戦術もあることを覚えておけば、今まで見えてこなかったカードの活用方法が見えてくるだろう。同じタグミーをするにしても、《Counter Surveillance》を使うまでのタグの貯め方にいろんな趣向を凝らせるはずだ。
ちなみに紹介した2つのタグミーデッキ、いろんなダメージ対策を講じていることを紹介したが、実はどちらも《High-Profile Target》を使えば簡単にフラットラインさせることができる。
どれだけ防御を固めようとこの圧倒的ダメージ量を前に生き残ることは不可能だからだ。
見かけたらこれで優しく引導を渡してあげよう。