Diesel

ボードゲームを中心とした記事を書きます。

ネットランナー会レポート 21.10.22 『デッキの改良』

 アンドロイド:ネットランナーをエンジョイしてますかー!

 ネットランナーを遊んでいる様子をTwitterで見かけるととてもテンションが上がります。この調子で同じゲームを楽しむ仲間が増えていくといいなー!
 どんどん遊んでどんどん投稿してもらえれば私が喜びます。私得。

 

 

 

 今回使用したデッキは先週の会で使った《Rielle "Kit" Peddler: Transhuman》のデッキ……を改良したもの。先週使って見つけた上手く機能しない部分を交換しより強みを出せるように調整した。

 デッキ作成は一日で成らず。試行錯誤の積み重ね。

 ちなみに改良パターンは2つ作った。

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パターンⅠ

 1つ目は《Test Run》と《Rejig》を組み込んだパターン。

 

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 《Test Run》でスタック*1もしくはヒープ*2から探したプログラムを無料インストール。《Rejig》で再インストールすればスタックのトップに戻されなくなる。

 《Compile》と比較してスピードに劣るものの、《Inversificator》のような高額なプログラムをリグに定着させるならこちらの組み合わせの方が安定しコストも安く済む。万が一リグに定着できずにスタックに戻されてもトップに戻るため、またすぐに使えるようになるのも強い。

 それに《Rejig》には別の使い道もある。

 

 

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 触れるもの全てを破壊できるプログラム《Imp》。コーポが恐れるカードの1つだ。

 ウィルスカウンターを補充する手段がなければ2回までしかその能力を使えないが、これを使いまわすのにわざわざ《Knobkierie》に頼る必要はないのだ。《Rejig》で再インストールしてウィルスカウンターを再装填! これだけですぐにまたカードを破壊できるようになる。

 余談だが《Rejig》がなかったときは《Scavenge》で同じようなコンボができた。《Rejig》は中立のカードなので、Criminalでも《Imp》再利用コンボはしやすくなった。

 

 《Imp》を採用する主な理由はコーポがHQで握っている任務カードをトラッシュするため。

 私の印象ではあるが、HQにキープされた任務はどれもこれもランナーにとって非常に危険。《Biotic Labor》や《Hard-Hitting News》といった勝負を決する力を持つ危険な任務がその例だ。

 

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 コーポはこれらのカードを握りながら計画書を待っていたりランナーが隙を伺っている。プレイさせないよう事前に対処したければ手札ごと吹き飛ばしてしまうのが最も確実で簡単で、CriminalやAnarchの派閥にはそれを可能にするカードが存在する。コーポに好き勝手させないためにはこういった妨害手段が不可欠だ。

 

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 しかし、己の限界に挑戦することがランの目的で破壊工作から程遠いShaper達にそういったカードはない。他派閥から借りるにしても影響値の関係でそう何枚も積むことは難しいが……。

 

 そこで白羽の矢が立つのが《Imp》。

 Shaperであれば1枚だけデッキに入れたこのカードをサーチしたり何度もリサイクルすることを簡単にやってのけるため、実は非常に相性がよかったりする。

 

 今回のゲームではなんとHQに握られていた《Punitive Counterstrike》をトラッシュ活躍をし、ランナーをフラットラインの危機から救う活躍を見せた。頼もしすぎるぞ!

 

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パターンⅡ

 もう1個のパターンは《Euler》を3積みしたもの。インストールコストの安いこのデコーダーをさっさとインストールして序盤の守りの薄い中央サーバーを圧倒しようという作戦だ。

 

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安い。インストールしたターンに限りサブルーチンのブレイクが無料になるおまけつき。

 

 守りの薄いうちに勝負を決めたいのでマルチアクセスの手段も多めに用意した。Shaperの代表的な攻撃手段である《The Maker's Eye》に――

 

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――汎用マルチアクセスの《Jailbreak》、HQへの恒久的な追加アクセスを提供する《Docklands Pass》まで完備。

 

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 特に《Jailbreak》は無料で使えるマルチアクセスでクレジットに余裕がない序盤でも使いやすい。おまけにドローもついてきて手札枯渇による息切れも防いでくれる攻防一体のカードだ。《Docklands Pass》が出ていればHQへのランでも3枚アクセスできるので火力も十分。

 

 ゲームでは序盤の守りが薄いR&D目掛けて《The Maker's Eye》をプレイ。3枚アクセスして1枚の計画書を盗み出した。

 

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 《Euler》さえ出ていれば臆することなく突っ込めるのが最高にクール。

 ICE1枚程度じゃ止められないぜ!

 

 

 とはいえ相手もちゃんと対策を講じてくるのでこの調子で攻め続けるのは難しくなっていく。

 

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 今回は《Euler》をさっさとインストールすることしか頭になかったので、《Euler》以外のアイスブレイカーをサーチする手段は用意していなかった。このように守りを固められてしまうと手も足も出なくなってしまうので、これの弱点を補えればもっと強いデッキになるだろう。

 

 

 

 

 

 どちらのデッキも改良前よりはるかに良くなっていることがわかって非常に満足度が高かった。

 しかしまだまだデッキの探求は終わらない。気付いていないだけでもっとよいカードの組み合わせはきっとあるはずだ。

 

 

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*1:山札

*2:捨て山

ネットランナー会レポート 21.10.15 『好きなIDを活躍させたい』

 皆さんはどのIDが好き?

 私が一番好きなランナーのIDは《Rielle "Kit" Peddler: Transhuman》だ。

 

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左はFFG版。右はNISEI版。

 

 Rielleは日本語化された大拡張創造と支配/Creation and Controlで追加されたカードで、私が手にした最初の追加IDの1つでもある。Shaperという派閥が好きだったのもあり、当時このID能力『各ターン最初にエンカウントしたICEはランの終了までコードゲートを得る』にとても興奮したものだ。

 その大拡張は現スタンダードではかなり前にローテーションしてしまっているが、入れ替わりでSystem Core 2019、そのあとのSystem Update 2021でも登場し、ありがたいことにShaperの基本的なIDの1つとしてスタンダードに残り続けている。

 

 初めて参加したネットランナーの大会もランナーのデッキはRielleだったし、これまでもRielleのデッキには何度も挑戦してきた。しかしここ最近強いのはCriminalやAnarchといった他の派閥。Apex等他の少数派閥も魅力たっぷりだ。Rielleを忘れてすっかり他のIDに夢中になっていた。ID一つとってもいろんなカードとの組み合わせを試せるのがこのアンドロイド:ネットランナーの良いところの1つでもある。

 

 次は何のデッキを組もうか……とNetrunnerDBでランナーIDの一覧を眺めていたある日、ふと、しばらくRielleのデッキを組んでいないことを思い出した。

――久々にRielleを活躍させたい。

 そう思い立った私はRielleの強いデッキを目指してデッキ構築を開始するのであった。

 

――とは言え《Rielle "Kit" Peddler: Transhuman》のデッキを組むのは意外と難しかったりする。強力なID能力を持つ代わりに影響値上限がたった10しかない。

 ID能力と強力なシナジーを持つ《Spooned》は影響値を3消費するため、多く積み込めば他の汎用的な他派閥のカードを諦めなければならない。どのカードを何枚詰めるかが非常に悩ましい……。

 

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 Rielleと言えばコードゲート付与の能力。そしてコードゲート付与とシナジーがあるのはこれらのデコーダーだ。

 

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 《Engolo》は1ターンに1度だけICEにコードゲートを付与する能力を持つ。コーポがICEを2枚重ねようと1枚目はRielleの能力で、2枚目は《Engolo》の能力でコードゲートにしてしまえばこれだけで突破できてしまう。強い。

 《Inversificator》はサブルーチンを全てブレイクして突破したICEの位置を別のICEと交換できる。Rielleと組めばどんなICEも1枚目はコードゲート。コーポが苦心して並べたICEを入れ替え放題だし、Rielleがコードゲートにした1枚目のICEを2枚目のICEと交換してしまえばやはり突破可能。超強い。The Classicフォーマットでは禁止指定されるほど。

 

 この強いデコーダーたちを存分に奮い、「高々2枚のICEで計画書を守り切れると思うなよ?」と序盤からコーポにプレッシャーをかけていきたい。得点行動に移れずHQにだぶつかせた計画書を一気に盗み出したいところ。

 高いインストールコストは《Compile》で踏み倒す。何もないところから急にこんな強いデコーダーが飛び出してきてICE2枚以下の守りを突破してくるのだから、コーポは相当慌てるに違いない。

 

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ラン中にICEにエンカウントしたらスタックからプログラムを1つ無料インストール。
ただしランが終わるとスタックの底に帰る。

 

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 もう1つ挑戦したいギミックがあったのでデッキに組み込んでみることにした。

 《Insight》と《Top Hat》を用いた疑似《Khusyuk》だ。

 

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 《Insight》はR&Dのトップ4枚をコーポに並べ替えさせ、その後公開するイベント。
 4枚の中に計画書があればすかさずR&Dにランして盗み取る。《Top Hat》があればコーポが計画書を上から何枚目に置こうがお構いなしだ。

 《Khusyuk》と比較すると最大4枚までしかカードを覗けず、コンボには《Insight》のプレイとそのあとのランで合計3クリック必要な点で劣る。しかし、インストールが必要なのは《Top Hat》のみ(しかも0クレジット)で序盤から運用でき、ランする前に計画書の有無がわかるため余分なランをせずに済むなど、運用が非常に安く済むのは見逃せない。

 《Top Hat》がなければコンボにならないので、すぐに手に入れるため3積み。《Insight》も試行回数を増やしたいので3積み。計6枚。デッキスロットが圧迫されていく……。

 

 

 

――といろいろ夢を詰め込んで組みあがったデッキを手にいざ勝負!とネットランナー会に持ち込んでみたものの、いろいろと反省点を残す結果となった。

 

 

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 《Compile》でインストールしたプログラムはそのままだとランの終わりにスタックの底に戻ってしまう。一度呼び出したが最後、次の《Compile》を使うまでスタックの中。《Compile》が引けなければ悲惨なことになる。実際なった。

 リグに定着させるにはラン中に再インストールする必要があり、それができるのは《Simulchip》だけだった。枚数を増やさなければ事故の元だ。

 

 上記が原因で《Inversificator》がリグに来ず、そうなれば《Insight》と《Top Hat》のコンボも実行不可能。これはカードの優先度を見直さなければならない。

 

 

 《Compile》はうまくいかなかったが、今回用意した《Harbinger》と《Aesop's Pawnshop》のクレジットエンジンはとてもよく機能した。

 

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 《Harbinger》は3影響値使って3枚積んでいる。このプログラムはトラッシュされたあと裏向きでもう一度インストールされるので、6ターン分の《Aesop's Pawnshop》の「餌」となる。ゲームの残りのターンは《Daily Casts》や《Telework Contract》の最後の一滴を搾り取ればよいので、ほぼ毎ターン《Aesop's Pawnshop》を稼働させることができた。クレジットの不足しがちなRielleにとって大きな収穫だった。

 

 

 デッキの改良はまだまだ続く。

 現にこれを書いてデッキの振り返りをしている最中にも、次のRielleデッキの構想が浮かんできている。今回得られた教訓を元に、次の会でもっとRielleを輝かせてみせる。

 

 


 

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ネットランナー会レポート 21.10.08 『プレイングミス』

 毎週金曜の晩はネットランナーを遊ぶ。毎週土曜はKeyForgeの日になった。

 

 最新のDark Tidingのデッキを手に入れて、それがなかなか良さそうだったので土曜のカジュアル大会に持ち込んでみたらなんと4戦3勝で優勝!

 先々週に同じデッキを使ったときは4戦2勝と振るわなかった。しかし今回は前回の経験が生きた。

 繰り返し使うことでデッキの使い方を学び、本来のポテンシャルに近づけることができた結果だと言えるだろう。
 逃した1勝はプレイミスが原因だった。次回はもっとうまく使いこなしてみせる。

 

 

 

 

 今回のネットランナー会は対戦回数こそ少なかったが、プレイミスで負けて悔しい思いをした印象深い試合でもあった。

 

 

 

 

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 《AgInfusion: New Miracles for a New World》はとてもユニークな能力を持ったJintekiのIDだ。ランナーを別のサーバーに飛ばし、飛ばした先にレゾ状態のICEがあればぶつけることができる。強いICEが1つでもレゾされていればそれがランナーに対する強力な抑止力として機能する他、サーバーへの攻撃(ラン)を別のサーバーへ逸らすといった使い方ができるテクニカルなやつだ。

 

 対戦はこのAgInfusionと《Ele "Smoke" Scovak: Cynosure of the Net》の組み合わせ。

 

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 1ターン目はR&DとHQをICEで守って《Hedge Fund》。2ターン目は遠隔サーバーをICEで守りつつ《NGO Front》を(もちろん裏向きのまま)置いて1アドバンス。クレジットを確保しつつランナーの様子を見守る。

  ランナーは《Aniccam》をインストールして素早くドローを進めつつクレジットを稼ぎ、遠隔サーバーにはランを仕掛けてはこなかった。《Aniccam》はイベントカードがトラッシュされるたびドローを誘発する。イベントを使って利益を得つつ次のカードを補充してくる優秀なコンソールだ。

 超能力もしくは鋭い感で《NGO Front》を見破ったか、Jinteki相手に無鉄砲なランは危険と踏んだか。ランナーはランを仕掛けてはこなかった。
 それもそうだ。AgInfusion相手に無暗なランは控えた方が良いだろう。藪をつついて強力なICEがレゾされればランナーにとって大きな痛手だ。

 大量ドローで溢れたグリップからカードが捨てられ、その中には《Paperclip》も含まれている。もうバリアのICEだけで計画書を守るのは厳しいだろう。

 

 このAgInfusionのデッキのプランは、十分な数のICEを置いて《Anoetic Void》をインストールして…とランを中断する手段を用意してから得点するというもの。しかし今はICEも《Anoetic Void》を起動するための手札も十分にないし、ランナーのランをさばききるだけの十分なクレジットもない。プランが遂行できない以上、臨機応変さが求められる。

 幸いServer1を守っているのはコードゲートの《Magnet》だ。藪蛇効果でランを躊躇させつつ、万が一ランを仕掛けられても《Paperclip》では突破できない。今がチャンスなのではないか……!?

 

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 これは2枚目の《NGO Front》だよ!と言わんばかりに、何食わぬ顔で《Send a Message》をインストールして2回アドバンス。

 心理と物理(電子? 論理?)の二重障壁だ。

 

 返すランナーのターンは《Diesel》と《Aniccam》で大量ドロー。――からのHQへの《Jailbreak》!

 

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 来た! コーポの手札が減ったタイミングを狙いすました鋭い攻撃。2枚アクセスされれば確実にHQの計画書《Obokata Protocol》は盗まれてしまう。

 ICEをレゾしても突破されることは確実なのでここはID能力でランを逸らすことにする。このあとまたHQにランされるだろうが、2枚同時にアクセスされなきゃ盗まれる確率は50%だ。

 

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AgInfusionのID能力起動! HQへのランをアーカイブへ変更!

 

 ふははは!  アーカイブのカードに好きなだけアクセスするがよい!
と心の中で勝ち誇る。しかしすぐさま笑みは消え失せる。

 

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 丸腰のHQに2枚目の《Jailbreak》が突き刺さる。な、なにぃ!?

 

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 計画書は盗まれてしまった。そのうえ虎の子の《Anoetic Void》もトラッシュされてしまった。圧倒的ドロー力によるネットダメージを受けきる余裕と選択肢の豊富さのなせる業だ。

 

 かなりの痛手だったが、幸いにも遠隔サーバーは攻撃されずに済んだ。

 続くコーポのターンで3アドバンス。得点した《Send a Message》の効果によりR&Dを守っていた《Anansi》をレゾする。

 

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 《Anansi》は全てのサブルーチンをブレイクしなければエンカウント終了時に3ネットダメージを与える特殊な能力を持つ対人・セントリー。この強力なICEがレゾされたことによってここからランナーにとっての地獄が始まる。全ての非レゾICEは全て《Anansi》だと思え!

 

 

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 HQを守るICEを失い(自分でトラッシュしたけど)、HQもすっからかん。素早く立て直さねば。

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

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 ドローを重ねるうちに引いた《La Costa Grid》と《Nisei MK II》をしれっとインストール。

 ランナーは《Daily Casts》を並べてクレジットを稼いでいて、未だに《Paperclip》以外のアイスブレイカーは見当たらない。恐らく《Anansi》に対抗する手段はまだないはず……。

 

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 やった!

 予想通りランされず、次のターンには得点できた。《Nisei MK II》のラン終了能力があれば最後の計画書の得点はかなり容易になる。大きなアドバンテージだ。

 その代わりクレジットの残りはたったの2。守りの全ては《Anansi》に託された。

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 コーポはHQに計画書《Obokata Protocol》を抱え最後の得点のために行動を開始する。そんな最中、ランナーはアイスブレイカーの《Engolo》、《Afterimage》をインストール。《Anansi》への対抗策を用意したうえでR&Dへの殴り込みを開始する。

 

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 優秀なキラーである《Afterimage》は《Anansi》を(毎ターン供給されるステルスクレジットを除けば)たったの2クレジットで突破できる。《Afterimage》の前にたった1枚の《Anansi》は紙切れ同然。コーポの命は風前の灯だ。

 あれよあれよという間に何度も突破され、R&Dから《Obokata Protocol》を盗まれてしまった。ランナー、6点目を獲得してこの勝負に王手をかける。

 

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 ん……?

 

 

 

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 おや……。

 

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 ランナーは《Obokata Protocol》を盗むコストによって4ネットダメージを受け、グリップがたった2枚しかない。スタックにあるカードを引き切っても3枚だ。

 

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 もうランナーは《Obokata Protocol》を盗めない。

 

 高まる気持ちを隠しつつ、遠隔サーバーにインストールして2回アドバンスする。クレジットは残り少なく、ICEをレゾできる分は残っていない。が、もうそれを気にする必要もない。

 

 ランナーがチェックしに来る。

 

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が、当然盗めない。《Obokata Protocol》はカードが残っていないランナーに対してとてつもなく非情だ。

 

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 《Afterimage》で《Anansi》を突破してR&Dへ。

 計画書にアクセスできる可能性があるとすればR&Dのトップにかけるしかない。

 1枚だけアクセスするならそれが計画書である確率は相当低いはずであるが、《The Maker's Eye》のようなマルチアクセスがあればヒットする確率は3倍。それが飛び出したときに阻止する手段も用意してある。

 

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 ここである考えが頭をよぎる。

 ランナーは《Anansi》を突破するためにステルスクレジットを全て使い切った。ということはもう《Afterimage》で《Anansi》を突破することはできないはず……。

 

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 今「ランを終了」させれば万が一R&Dのトップが計画書だった場合の事故を回避できるのでは…………

 

 

 

 

 

――などと考えてしまったばかりに、このゲームで最も大きな間違いを犯してしまう。

 

 《Nisei MK II》の効果でランを終了させた次のクリックで、ランナーは《The Maker's Eye》を繰り出してきた。

 

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 なぜ? どうして?

 《Afterimage》ではステルスクレジットが足りず《Anansi》のサブルーチンをブレイクできない。ブレイクできずに通過したその後はダメージを受けてフラットラインだ。

 

 謎の行動に驚きを隠せなかったが、《Anansi》の表示が切り替わったことで全てを理解した。

 

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 完全に失念していた。

 

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 Engolo》にはICEにコードゲートを付与する能力があることを……!!

 

 

 

 《The Maker's Eye》の効果によりR&Dの上から3枚を順にアクセスされる。

 3枚目は計画書《Cyberdex Sandbox》だった。

 

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ゲームエンド

 

 

 

 かなり悔しい負け方だ。

 《The Maker's Eye》の存在を予想できていたにもかかわらず、《Nisei MK II》の使用判断を誤ってしまった。ここさえ間違わなければ勝てていたのに。

 

 

 

 このゲームをもう何百と遊んでいるが、様々なシチュエーションに対して適切な判断を完璧に下すという境地にはまだ至れていない。

 いろんなデッキが存在し、対戦の組み合わせが存在し、ドローの内容によって毎回異なる展開が訪れる。

 アンドロイド:ネットランナープレイヤーがカードを使って遊ぶゲームだ。だからこそプレイングに磨きをかけ甲斐があるように思う。まだまだ精進せねば。

 

 

 

 

 

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 それにしてもコーポ側、このゲームで19クレジットしか稼いでいない。かなりデッキの回りが悪かったのは確かだ。

 このデッキのポテンシャルはこんなものではない。今度はもっとうまく使いこなせるはずだ。

ネットランナー会レポート 21.10.01 『6ターンで勝つTitan』

 まだまだ続いたEternal熱。

 いきなりだがまずはこちらの対戦をご覧いただこう。

 

 

 

 

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 コーポ側のIDは《Titan Transnational: Investing In Your Future》。
 1ターン目はServer1にカードをインストールし、HQをICEで守り、《Hedge Fund》のプレイで3クリックを使い切る。ターンエンド。

 

 

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 2ターン目開始前にインストールしていた《Illegal Arms Factory》をレゾ。毎コーポのターンに1ドローと1クレジットを得られるようになった。
 1クリック目に2枚目の《Hedge Fund》をプレイしてクレジットを稼ぐがここまでに特に目立った動きはなし。ドローと1クレジットを得てターン終了。できればR&DをICEで守りたかった。

 ランナーのターンにR&Dを攻撃されるも、幸い被害なしで切り抜ける。

 

 

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 3ターン目の強制ドローは3枚目の《Biotic Labor》。
 クレジットに余裕はないが、HQに計画書が溜まってきたのでそろそろ行動を起こさねばならない。

 《Biotic Labor》をプレイして2クリックを得る。
 残り4クリックで《Project Atlas》をインストールしてアドバンス3回。得点。

 

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 ID《Titan Transnational: Investing In Your Future》の効果で得点された《Project Atlas》に計画カウンターが載った。クリックを全て使い切ったのでターンエンド。

 

 

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 4ターン目の強制ドローによって《Hostile Takeover》がHQに来たので、インストール、アドバンス、アドバンスで得点。

 

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 1計画点を得ると同時に差し引き5クレジットを増やして12クレジットまで回復。
 これだけクレジットがあればまた《Biotic Labor》を使える。

 カードがHQの上限を超えているのでダブった《Biotic Labor》を捨てた。

 

 

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 5ターン目のドローは《Reconstruction Contract》。直前のランナーのターン《Illegal Arms Factory》をトラッシュされてしまったので、クレジットは増えずドローは1枚だけだ。

 1クリック目で《Reconstruction Contract》をインストールしてレゾし――

 

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――2クリック目でHQの《Dedication Ceremony》をプレイ。《Reconstruction Contract》の上にアドバンスカウンター3つを置く。

 

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 3クリック目にHQから計画書《Above the Law》をインストールし――

 

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――《Reconstruction Contract》の能力を起動。アドバンスカウンターを全て《Above the Law》に載せ替える。

 

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 そして得点。これで5点目。

 

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 3クリック全て使い切った。10クレジットを残してターンエンド。

 

 

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 6ターン目のドローはこのゲームでようやく引けた2枚目のICE。しかし何をドローしようが最早問題ではない。

 《Project Atlas》の計画カウンターを支払い効果発動。R&Dからもう1枚の《Project Atlas》を探してHQに加える。

 

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 《Biotic Labor》をプレイしてクリック数を増やし、インストール、アドバンス、アドバンス、アドバンス。

 

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 《Project Atlas》を得点して合計7計画点。

 

 

 決着までのターン、なんと6ターン
 6ターン目で7点分の計画書を得点し終えてしまった。

 

 ラッキーなランナーがゲーム早々に7点分の計画書にアクセスしたり、《Snare!》を踏んだりしてすぐに決着がついてしまう事故は時にはあるだろうが、コーポでもこんなに早く計画書の得点で勝つことができるものなのか……。

 今年のStandardの世界大会では圧倒的速度で計画書を得点して勝利するコーポのデッキが流行ったが、それでも勝つには10ターンほど必要なことを鑑みればどれほどすごいことかわかるだろう。

 たぶんこれが一番早いと思います。

 

 

 ということで今回はその《Titan Transnational: Investing In Your Future》のデッキの紹介だ。

 

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Fast Titan Eternal Light

Titan Transnational: Investing In Your Future

Agenda (9)
1x Above the Law
1x Global Food Initiative ●
1x Government Takeover
3x Hostile Takeover
3x Project Atlas

Asset (8)
3x Illegal Arms Factory
2x Rashida Jaheem
3x Reconstruction Contract

Operation (16)
1x Attitude Adjustment ●●
2x Audacity
3x Biotic Labor ●●●●● ●●●●● ●●
3x Dedication Ceremony
2x Hansei Review ●●
3x Hedge Fund
2x Preemptive Action

Upgrade (1)
1x Cyberdex Virus Suite

Barrier (4)
2x Ice Wall
2x Vanilla

Code Gate (6)
2x Afshar
2x Macrophage
2x Quandary

Other (3)
3x Chimera

Sentry (2)
2x Tour Guide

17 influence spent (max 17, available 0)
20 agenda points (between 20 and 21)
49 cards (min 45)

 

 

 Titanと言えば、そのID能力と3/2計画書である《Project Atlas》を使ったシンプルで強力なコンボが有名だろう。Titanであれば《Project Atlas》を普通に得点するだけでその強力なカードサーチ能力を利用できる。

 このデッキもこのコンボを主軸に置いたものだ。

 

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ID能力で計画カウンターを常に1個以上確保できる。

 

 《Project Atlas》を得点してしまえば、そのあとは常にR&Dから欲しいカードをサーチしていつでもHQに加えられるようになる。次の《Project Atlas》を探すもよし、HQの《Project Atlas》を得点する手段を探すもよし。

 

 《Project Atlas》を得点する主な手段はファストアドバンス。ターン開始時に必要なカードが揃っていればすぐさま得点するためだ。

 ファストアドバンスのためには以下のような手段を用意している。

 

 

 クリック数を増やしてインストールから3回アドバンスできるようにする《Biotic Labor》。得点するのに7クレジットも必要だが最も安定感がある。

 

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最初の基本セットから存在する最もポピュラーなファストアドバンス手段

 

 《Dedication Ceremony》と《Reconstruction Contract》の組み合わせ。必要なカードが多い代わりに得点に必要なクレジットはたったの2。

 

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資材を組み合わせたコンボ

 

 今回の対戦では出番がなかったが、HQのカードを全て捨てる代わりに無料のアドバンストークン2つを1クリックで捻出する《Audacity》。手札を失うため使用できる場面が限られるが、1クレジットあれば得点できる。

 

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使うと手札がなくなる、安いけどリスキーなカード

 

 このデッキでは《Project Atlas》とファストアドバンスに必要なカードをいち早く引き込むため、《Illegal Arms Factory》、《Rashida Jaheem》といったドロー(とついでにクレジット)を加速させる資材を多めに用意している。

 

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 これらを使ってドロー枚数を増やして必要なコンボパーツを強引に集める。最初の《Project Atlas》さえ得点できれば必要なカードはいつでもR&Dから探してこれるため、毎ターン必要なカードを揃えて連続得点できるというわけだ。

 

 

 Eternal、なんて恐ろしい環境なんだ……。

と、言いたいところであるが、このデッキとほぼ同じ内容のデッキを以前のStandard環境(System Gatewayがリリースされる前)では組むことができていた。

 ランナーがほぼ介入する暇もなく勝利できてしまっていたため、StandardでのTitanの禁止はやむなしといったところだろう。《Project Atlas》との組み合わせが強すぎたのだ。

 

 

 カードがほぼ自由に使えるEternalならどれだけ早くできるだろうか?という興味本位で作ったデッキだったが、もう二度と使うことはないだろう。

 ゲームの早いうちにファストアドバンスだけで得点しにいくので、ランナーの状態にほぼ影響されないし、そこにインタラクションは生まれない。

 対人ゲームは駆け引きがあってこそである。

 

 

 

 

――というデッキを使った対戦の向こう側で大変面白いコンボが披露されていたのでせっかくなのでこちらも紹介しておこう。

 

 ランナーの2ターン目終了時のリグの様子。

 《Bazaar》と3枚の《Technical Writer》が並んでいる。

 

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 3ターン目の開始時に《In the Groove》をプレイして《Replicator》からの――

 

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――《Ramujan-reliant 550 BMI》をインストール。

 

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 《In the Groove》の効果で1クレジットを獲得。
 さらに、誘発した《Replicator》の効果によりスタックから別の《Ramujan-reliant 550 BMI》を探してグリップに加え、同じく誘発した《Bazaar》の効果によりそれをインストール。また《In the Groove》、《Replicator》、《Bazaar》が誘発して――

 

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――これを繰り返す。1クリックで連続して6枚もの《Ramujan-reliant 550 BMI》がインストールされた。

 次のクリックで《NetChip》をインストールして同様に繰り返して――

 

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――こうなった。1ターンに12枚ものハードウェアがインストールされた。

 こんなテクニカルなインストール術を目の当たりにして《Technical Writer》もがっぽりと記事代を稼いだに違いない。

 

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 すごいコンボだ。。

 こんな奇天烈なコンボが見られるのも幅広いカードプールを持つフォーマットの特権かもしれない。

 

 

 

diesel.hatenablog.jp

ネットランナー会レポート 21.09.24 『Eternal環境のカード』

 にわかにEternal熱を帯びたAlways be Runningサーバー。

 今回行われた対戦は全てEternal……から現状/Currentと制限・禁止カードを取り除いたローカルフォーマット、Light版Eternal(仮称)だ。

  みんな意外と未知のカードの組み合わせに飢えていたのね……

 

diesel.hatenablog.jp

 

 Eternalフォーマットはカードの制限の緩い超が付くほどの魔境。Light版で弾いたのはそのわずかな上澄みに過ぎない。

 Standardでは許されないカードの使用も組み合わせも許させる圧倒的パワーで襲い来る。そんな環境で対等に戦うには同じくハイパワーなカードでコンボを決めるしかない。理不尽なんて甘ったれたことは言ってられないぞ!

 

 

 今回は対戦で使用されたカードについて語っていこう。Standardフォーマットでは使用できなくなって久しいカードが次々と飛び出してくる。当時の環境を知っている人なら懐かしさを感じるのではないだろうか。私は昔の環境知らないけど。

 

 

 

プログラムの再利用を許さない防御システム

 まずはこちら。

 

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 《Skorpios Defense Systems: Persuasive Power》はNAPD MWL*1で制限*2に指定されていたカードだ。

 1ターンに1度、ランナーのカードがいずれかの領域から捨てられる際、それをゲームから取り除くことを選べるこのID能力。ランナーのヒープ*3に加わるカードを狙い打ちで除外でき、ヒープから再利用したいカードやヒープに落ちることで意味のあるカードを使用するデッキをとことん苦しめることができた。特にヒープに大量にカードを落とす《MaxX: Maximum Punk Rock》にとっては天敵と言えよう。

 

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 ランナーが計画書を盗んだとたん《Hunter Seeker》が飛んできてアイスブレイカーを除外されないよう、同じアイスブレイカーの予備を積んだり破壊されない工夫を凝らしておこう。

 このIDと入れ替わるようにStandardに加わった《SDS Drone Deployment》との組み合わせは恐ろしそうだ…。

 

 

 


コーポ版ケイティ

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 《Shell Corporation》はLunaサイクルで使用できた強化のカード。

 能力は1ターンに1度しか起動できないが、片方の能力を起動するごとに3クレジットを搭載し、もう1つの能力を起動して搭載したクレジットを全て回収するクレジットエンジンだ。

 この能力はランナーのカード《Kati Jones》と全く同じもの。少々特殊な手順を踏むものの、1クリックで3クレジットのゲインを何度でも利用できるパワーはお世話になった人も多いのではないだろうか。

 

 ランナーのカードである《Kati Jones》と決定的に違うのはトラッシュのされやすさだ。《Kati Jones》がコネ/Connectionというトラッシュされやすいサブタイプを持っていることを考慮に入れても、トラッシュコスト3の《Shell Corporation》をトラッシュするのは圧倒的に簡単だ。せっかく大金を積み込んでもトラッシュされればパーになる。

 

 しかし強化というタイプ故、その儚さを逆に利用できる。

 《Shell Corporation》はコーポにとって強力なクレジットエンジンで、ランナーにとっては脅威かつ比較的簡単にトラッシュできるカードだ。ランナーを誘い込むという目的で低リスクな釣り餌としては最適ではないだろうか。

 

 対戦では《Mwanza City Grid》と併用された。ランナーにマルチアクセスを提供するがアクセスした枚数の2倍のクレジットをコーポにもたらす特殊な強化カードだ。

 IDは《Haarpsichord Studios: Entertainment Unleashed》でどれだけアクセスしようと盗める計画書は1ターンに1枚だけ。安全に待ち伏せ/Ambushを踏ませられるうえクレジットもがっぽりなおいしいコンボが披露された。

 

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ランナーホイホイ

 純粋なクレジットエンジンとして運用する方法もある。簡単にトラッシュされないためにICEでガチガチに守りを固めたサーバーの奥で運用すればよい。強化なので他の資材と一緒に運用したり計画書を得点するための遠隔サーバーに置いておくことが可能だ。

 実にいろんな使い方の考え甲斐のあるカードだね。

 

 

 

 さて今回はこの辺で。

 面白いカードやデッキやコンボがあったらまた今度紹介しよう。

 

diesel.hatenablog.jp

*1:FFGの時代の禁止制限リスト

*2:制限のリストの中から1種類しかデッキに含められない

*3:ランナーの捨て山

スリルと快感。弾幕パズルゲームBULLET♡

 Level 99 Gamesの新作ボードゲームBULLET♡を遊んだ。

 Level 99 Gamesといえば、日本でメジャーなのはMillenium Bladesだろうか。同じところから出ているArgentやBattleCon、Exceed Fighting Systemを遊んだことがあり、どれもこれも面白いゲームなので期待が高まる。Kickstarterで見かけたときはプレイヤー間のインタラクション薄そうと思って見送ってしまったけど。

 

 

 BULLET♡は弾幕シューティングをテーマにしたボードゲームだ。ヒロインたちは自分たちに雨霰と降り注ぐ弾丸に対し、それぞれが持つ特殊能力で応戦する。

 ゲームは一人以外もしくは全員が全滅するまでラウンドを繰り返す。The Last Girl Standing(最後まで立ってた奴の勝ち)方式。

 

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ヒロイン毎にライフや特殊能力、パターンカードの内容が異なる。

 

 プレイヤーにはそれぞれ袋が配られる。袋から1つトークンを引くたび、それは今まさにあなたに向かって飛んできている弾丸となる。引いた弾丸の色と対応するトラックの、上から空きスペースだけを数えてN番目のスペースにそれを配置する。Nは弾丸に書かれている数字だ。

 弾丸が配置されていない縦列は空きスペースが6つ分存在するが、配置されるたびに空きスペースは減っていく。もし空きスペースが3つしかない状態で4が書かれた弾丸をその列に配置しなければならないとき、弾丸はその列を溢れて一番下へ。その矢印の先には――

 

 

 

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――💔

 

 弾丸はあなたに届いてしまう。

 

 

 

パターンカード

 次々と飛来する弾丸を放置し続ければあっという間にボードは埋め尽くされてしまう。そうなれば瞬く間に被弾して脱落は免れない。

 ヒロインの個性を反映したユニークなパターンカードを使って切り抜けよう。

 

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弾を消す手段。ヒロイン毎に9種類ある。

 

 例えばアーデルハイトの「燃え上がる間奏」を使えば、爆発マークのあるところ――赤い弾丸が横に連続して2個並んだ真上1マスずつ、すぐ右の1マスおよびその上の1マスの範囲――にある弾を排除できる。これらのパワーカードは毎ラウンド開始時に手札が3枚になるように補充されるので、これらのカードを惜しみなく使って弾幕を切り抜けよう。

 

 右側のボードにあるのはヒロインが持つアビリティだ。弾丸を移動させたり追加のパターンカードを引いたりといったことが可能で、これらのアビリティはAPが払える限りは何度でも使用できる。

 

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ヒロインの能力によりいくつかのトークンが裏返っている

 

 青のトラックに3つ目の弾丸が配置された。もしこのまま放置すれば、青の4の弾丸を引いたときに被弾してしまう。手札に先ほどのパターンカード「燃え上がる間奏」があるので使ってみよう。

 アビリティを2回使って青の2の弾丸を真下に、青の4の弾丸を右上に移動して――

 

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パターンを確認しつつ弾丸を操作する。

 

――こう!

 裏返った弾丸はこのヒロイン、アーデルハイトの能力により任意の色とみなせるので、目当てのパターンカードの発動条件を満たすことができた。

 

 

 それでは皆さんご一緒に。

 「燃え上がる間奏」!!

 

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パターンカード発動!!

 

 排除範囲内に巻き込んで弾丸3つを排除できた。

 

 BULLET♡ではこのようにパワーカードとアビリティを駆使して弾丸を排除していく。

 いかに上手にこれらの能力を使うかが生き残るカギだ。パワーカードおよびアビリティの使用は袋から新しい弾丸を引く前後に好きなだけ行えるぞ。

 

 星マークが付いた弾丸はボーナス付き。1つ排除するたびに星マークのアビリティが発動する。大体はそれでAPを回復できるので、うまく狙って排除すれば更なる弾丸の排除が狙えるだろう。

 ちなみにひっくり返った弾丸はこのヒロインの星マークのアビリティによるものだ。

 

 

 袋から弾丸を全て引ききるまで弾丸は飛来する。

 無事生き残れただろうか? 生き残ったならパワーアップを受け取って次のラウンドに備えよう。自分の場に残された弾丸はそのまま次のラウンドに持ち越される。

 

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ランダムに選ばれたものから早い者勝ちで獲得する。1回限りの使い切り。

 

 

 

増幅

 排除した弾丸は左隣のプレイヤーに送られ、待機エリアに溜まっていく。自分の待機エリアにも右隣のプレイヤーが排除した弾丸がどんどん送られてくる。

 

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待機エリアの弾丸。本来は裏向きで送り付ける。

 

 これら待機エリアに置かれた弾丸はラウンド終了後そのプレイヤーの袋に加わる。右隣のプレイヤーが沢山弾丸を排除すれば排除するほど、次のラウンドの自分への弾幕は厚く激しくなるのだ。

 それに加え、Intensity Trackによる弾丸の追加もある。

 

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ラウンドを追うごとに弾丸の総数が増える。つまり……

 

 待機エリアの弾丸と同様、Intensity Trackが示す数の弾丸も袋に加えられる。これによって加えられる弾丸はラウンド毎に増えていく。新しいラウンドを迎えるたびに袋の重みが増すのを感じられるだろう。

 できるのはいち早く他のライバルが倒れることを祈りつつ目の前の弾丸を排除することに集中することだけだ。できるだけ沢山弾丸を排除して相手の負担を増やそう。

 

 

 ここまでがBULLET♡を遊ぶ際の一連の流れだ。あとは最初に書いた通り、生存者が1人になるか全滅するかまで上記のラウンドを繰り返す。

 大事なことを1つ言い忘れていたが、パワーカード・アビリティの使用は3分の間に行わなければならない。

 

 

 

 

 

 

……え?

 

 

 

 

 実はこのゲームはラウンド開始時終了時を除いてリアルタイムに進行する。

 よーいドン!でゲームを開始したら、可能な限り急いで袋から弾丸を配置し、アビリティで弾丸を操作し、パターンカードで弾丸を排除する、を次々と行わねばならない。

 殺意満々の相手を目の前にしてゆっくり考えを巡らせる時間はないのだ。

 

 

 タイムオーバーするとそれ以降パターンカードもアビリティも使用できない。袋が空になるまでひたすら弾丸を引くだけになる。

 そうなればあとは溢れんばかりの弾丸がボードに配置されるのを眺めるのみ。モタモタしていた者の末路だ……

 

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Game Over

 

 

 

協力モード

 プレイヤー間で協力し、一人のNPCヒロインと戦うモードも存在する。

 このモードでは排除した全員の弾丸を集めてボスのシールドを破るのに使用する。なんと1ラウンド3分間の制限はなくなり、ゆっくり考えて遊ぶことができる。

 

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協力モードのボスはそのヒロインのボードの裏側を使う。

 

 全員が共通で仲間に対して使えるアビリティが追加され、消しづらい弾丸を送り合ったりできる。時間制限がないので、仲間のボードを確認しつつ相談しながらゆったりとパズルを楽しむことができる。

 

 

 

 

間奏感想

 ボードに向かって一人で黙々と遊ぶゲームかと思っていたが、遊んでみたらその認識は間違っていたことがわかった。

 ヒロインはそれぞれ様々な特徴を持ち、得意不得意とする弾丸のパターンも異なる。自分が排除した弾丸はすなわち次ラウンドの相手への攻撃となるので、あえて特定の数字を避けて排除を試みるといった戦略も不可能ではない。そうでなくともできるだけたくさんの弾丸を送り付ければ相手の悲鳴が聞こえてくるはずだ。

 

 どこに降って来るかわからない弾丸。限られたAPとパターンカード。

 全ての弾丸を対処しきるのはかなり難しい。ゲームの後半になればなるほどそういう場面は増えてくる。リソースを温存するために、あえて弾丸がボードに溜まる危険を冒して袋に手を突っ込む場面もあるだろう。

 だが、危険を冒してうまくマッチするパターンに辿り着けたときは、星マーク付きの弾丸をうまく沢山排除できたときと同じくらいエキサイティングできる。

 

 大きなリターンを得るためにどれだけ大胆に弾丸を引けるか、そしてどこでリスク回避のために行動するか。

 リスクをコントロールしきった先に勝利がある。それがBULLET♡というゲームだった。

 

 1回のプレイ時間は15分~20分程度で、プレイ回数を重ねるほど上達を感じられるゲームであるため、繰り返し遊ぶのにぴったり。

 ぜひプレイしてこのハラハラドキドキを味わってほしい。

 

 

 

 

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攻め落とすか守り切るか。非対称2人用ボードゲームStronghold: Undead

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 いろんな版があるらしいStrongholdというボードゲーム。今回遊ばせてもらったのはStronghold: UndeadのKickstarter版だ。たぶんこれ↓

boardgamegeek.com

 

 侵略側と防衛側に分かれて戦う非対称な2人用ゲーム。侵略側は8ラウンド以内に城壁を突破できたら勝ち。防衛側は8ラウンド耐えれば勝ち。

 

 

侵攻と迎撃

 侵攻側のユニットは毎ラウンド道に沿っててくてく歩き城壁を目指す。どのユニットを進めるかもしくは進めないかは選べるので、頭数が揃うまで待機させることも可能だ。

 

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堡塁にたむろするバンパイアとガイコツ兵士。他に幽霊もいる。

 

 侵略側のユニットは戦線→堡塁→城壁とラウンド毎に駒を進められ、城壁まで侵略側ユニットが到着するとユニット同士の直接的な近接戦闘が発生する。防衛側は侵攻の様子を見つつ、兵士の配置転換や防衛設備の組み立てといった作業で攻められそうな城壁の防御を厚くし、応戦準備をすることになる。

 近接戦闘では城壁スペース毎に侵攻側・防衛側のそれぞれの合計戦闘力を比較し、超過した戦闘力が合計の小さい方へのダメージとなる。割り振ったダメージが十分あればその分相手のユニットを撃退できる。

 撃退された防衛側ユニットは病院送りになり、ベッドが足りなければ溢れた負傷者は死んでしまう。防衛側の人員は数が限られておりあとから増えないので、できるだけ死なせないようにしよう。

 撃退された侵略側ユニットはそのまま死ぬが、毎ラウンド大量に増援が送られてくる。殺しても殺しても代わりが湧いてくる様はまさに不死の軍団。拡張によって本当に死ななくなる場合もあるけど。

 

 防御側のユニットに割り振り切れないほどのダメージが発生した城壁スペースがあればその城壁は突破されてしまう。つまり侵攻側の勝ちだ。

 

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ユニットではないので破壊されないが城壁自体も戦闘力を持っている。

 

 防衛側の城壁スペースにはユニットが2~3個しか配置できない。ユニットでない城壁や司祭が戦闘力を生むとはいえ数では侵略側に圧倒的に負けてしまう。城壁に張り付かれる前であれば塔に設置した大砲や射手の射撃によって遠距離攻撃ができるので、離れているうちにできるだけ敵の数を減らしておきたい。

 

 

魔術書

 侵略側は不死の軍団を操るネクロマンサーなので、当然怪しげな魔術を使う。使用可能な魔術が魔術書(カードの列)として公開されるので、マナを使ってラウンド毎にそれぞれ1回ずつ唱えることができる。

 

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左から順にマナコストを支払って解決していく。

 

 カードの効果は様々だが、主にマップ上に攻城兵器(バリスタやカタパルト)を配置するか、マップ上に特殊効果をエンチャントするか、即時に何か解決するその他の能力に分かれる。

 魔術書は最初は全て緑のカードが並んだ状態でスタートするが、魔術書を解決する前にライブラリに存在するカードとページを交換したり、ページの順番を並び替えたりといった「編集」が行える。戦況によって使い分けることによって有利に侵攻を進められるが、一度破り捨てたページはもう二度と戻ってこない。

 

 

防衛側の作戦指揮

 刻々と敵の軍勢が迫る中、城内では慌ただしく迎撃準備が行われる。兵士を訓練したり、足場を組んだり、城壁を補強したり、大砲を設置したり……。

 防衛側に与えられるリソースは時間だ。砂時計の形をした駒を受け取ったらそれを全て城内のいずれかの作業に割り振らなくてはならない。必要な数だけ砂時計が配置されるとその効果を直ちに解決する。

 

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砂時計をまばらに置いておけば、解決を先延ばしにして必要な時にすぐ起動できる。

 

 砂時計は兵士の強化や施設の強化以外にも、兵士や司祭を配置転換したり司祭の能力(城内のパニックを鎮めたり、ヴァンパイアを撃退したり)を起動するのにも必要になる。敵がどこから攻めてこようとしているのかを見計らって防御を固める場所を決めておきたいが、Ⅰの施設以外の能力は1ラウンドに1回しか起動できない。必要になってからでは間に合わない場合もあるので、先んじて準備を進めておく判断をすることもあるだろう。

 

 

 この砂時計、1ラウンド目には10個貰えるが、それ以降のラウンドでは2個しか貰えなくなる。逆に敵が貰えるマナはラウンド毎に減っていき、ついにはマイナスになる。大量の不死のモンスターを操るネクロマンサーにも体力の限界があるということだろうか……

 

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最初だけは潤沢にある時間。徐々に息切れするマナ。

 

 このゲームの面白いところの1つは、この砂時計リソースの配り方にある。

 砂時計は受け取るたびにどこに配置するか決定しなければならない。受け取るタイミングはラウンド開始時の他、ネクロマンサーがライブラリーから魔術を使うたびだったり、侵略側ユニットが移動し終わったあとにある。

 ライブラリーのカードはその魔術を唱えるのにマナを支払う必要があるが、同時にそれと同じだけの砂時計を防衛側にも与える。魔術を唱えれば唱えるほど、それが強大であればあるほど、防衛側にも対応するための時間が与えられるというわけだ。

 

 じっくりお互いに準備してからぶつかり合うか、もしくは使う魔術を絞って奇襲を仕掛けるか。準備が整わないうちに一斉に複数の城壁を大量のアンデッド達で攻め立てれば防御は難しくなる。奇襲は侵略側は防御側の隙を突く腕の見せ所であり、防御側は隙を見せないようにうまく立ち回りたい。

 

 

 

遊んでみた感想

 テーマも内容も私好みのゲームだ。侵攻側のライブラリのカードや増援の内容はランダムなので、その内容に応じて攻め方をいろいろ工夫する余地があり、時間のやりくりによる駆け引きも楽しいゲームだった。

 

 

 だた一つ気になったのは非対称なゲーム故のバランスだ。まずは侵略側と防衛側を1回ずつ遊び、どちらも侵略側が勝利した。

 侵略側の緑のカードにある「Turn to Dust」が無茶苦茶協力な魔術で、起動するたび防衛側のサプライにある(つまり未配置の)ハンマーアイコンのタイル1枚をボードから除外してしまえる。これらのタイルは基本的にあとから置いた方が強いわけだが、このカードが存在することによって早めに配置しなければ必要な時にはもう残っていないという事態が発生しえる。

 カードゲームでいうなら毎ターン手札から一枚選んで捨てられるようなものである。タイルを先置きすれば侵略側はそのタイルがない場所を選んで攻撃すればよいので、防衛側がかなり不利になってしまう印象だった。

 

 そこで、3戦目はランダムカードプールから「Turn to Dust」(と、ついでに弱すぎて使われないカード)を取り除いてプレイ。

 防衛側はタイルがサプライから消える心配をしなくてよくなったので、敵の侵攻具合を確認しながら配置するタイルを選べるようになり、一進一退の駆け引きを楽しむことができた。さながらタワーディフェンスを遊んでいる感じだ。

 ヴァンパイアに有効な「杭」や幽霊対策に有効なエンチャントを、ゲーム後半の必要な場面で配置できるようになったので、防衛側は攻められてから守るというプレイが可能になった。とはいえ、それらのタイルは1ラウンドにそれぞれ1個しか置けないことに変わりはないので、複数の城壁を一斉に攻められてから対策したのでは間に合わなかった。

 

 「Turn to Dust」がバランスを崩しているのかどうかははっきりと確証が持てないが、ゲームに慣れていないうちは外しておいた方がよいかもしれない。防衛側のプレイングが悪い可能性はもちろん捨てきれない。

 どこかに防衛側で勝つ方法の解説はないだろうか……

 

 しばらくはローカルルールでバランス調整して遊ぶことになりそうだ。

 

 

 

 

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